東京都に在住の歌人、大松達知さんが、第3歌集「アスタリスク」を送って下さった。
大松さんは若く高校生時代に短歌に出会った。
そして30歳代の若さで、大結社誌「コスモス」の選者となり、総合歌誌、ネットの世界でも活躍している。
「アスタリスク」を読むと、重い内容が(帯文にもあるように)軽妙に詠まれている。これは彼が生きづらい世の中を生き抜き、大小の危機を明るく乗り越えているからだろうか。
アメリカ留学や数多い海外旅行の経験から、日本と日本人を客観視する事も力になっているだろう。
意図はないのだが、歌集の後半から選んで、以下に7首を引く。
満員のスタジアムにてわれは思ふ三万といふ自殺者の数
はたやはた母は老いたるかもしれず母に会ふまへすこしおそろし
豆腐にも貴/俗の違ひありまして上段にあれば小さくて高い
鍋の蓋のやうな沈黙が降りてきてオオマツの乱は鎮圧された(会議)
真うしろを妻が歩むは疲れてます不機嫌ですの合図なり危険
<不知火>の通称デコポン こうやつてみんな子供のままの日本
切れ端でいいのだけれどそれもない栞がないとほとほと困る
1999年、河出書房新社・刊。
この本には、歌集「呑牛」「逆旅(げきりょ)」2冊と、エッセイ、鼎談記録などが収められている。
歌集「呑牛」は、1997年1月1日から12月31日まで毎日、とぎれず日記を添えた歌を、歌誌「歌壇」に連載し、のちに纏めた歌集である。
どのような出来事があった日に、どのような短歌が詠まれるかわかって、興味深い。
「逆旅」は、歌集未刊の第11歌集である。日常が詠まれて、特殊な作品はない。
これで「佐佐木幸綱の世界」全16巻のうち、歌集篇・全4冊を読みおえた。
やはり印象的な作品は、初期の相聞歌である。「男歌」と呼ばれる勇みには惹かれない。
「コスモス」の先輩歌人、奥村晃作氏のホームページ、「奥村晃作短歌ワールド」が閉鎖された。
先日のメールでは、「パソコンの不調により、ホームページの維持が困難になった」との事だった。
奥村晃作氏をはじめ「コスモス」の先輩諸氏のホームページ、ブログに憧れて、僕もブログ「サスケの本棚」を開設し、拙いながら続けてきた。
心身ともにお若い奥村晃作氏だから、近いうちに新しいホームページを立ち上げられると、期待している。
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