角川書店「増補 現代俳句大系」第1巻(昭和56年・刊)より、5冊めの、日野草城の第2句集「青芝」を読みおえる。
原著は、昭和7年、京鹿子発行所・刊。
彼の句には、当時新しかったであろう語が登場する。
たとえば、「タイピスト」というOL、「ココア」という飲物、など。
この句集のあと彼は戦前の一時、新興俳句運動の先頭に立ったそうである。
以下に5句を引く。
一碗の佳き珈琲の惜む春
南座を出て春泥の四条あり
山の娘のすこやかにゆく躑躅かな
まなかひの白百合かをる小午餐(ランチ)かな
ふけて鳴く馬追を飼ふ隣かな
京都府の書店「三月書房」のホームページより注文していた、「土屋文明書簡集」が届く。
2001年、石川書房・刊。
箱、輸送用箱、本体にパラフィン紙カバー。
この本は、「三月書房」のホームページの「短歌本の特価コーナー」にあり、定価の三割で売られていて、欲しい気持ちが強まり、とうとう買ってしまった。
バーゲン品に熱中する女性の気持ちが、少しわかる。
判型はA5判と大きくないが、858ページと厚く、全1,227通の書簡を収める。
全書簡集と謳っていないので、判明している書簡のうち、収めてないものがあるかも知れない。
人脈の広い人だったろうから、それらを知るためにも、書簡集は重要である。
京都府の書店「三月書房」のホームページより注文していた、小島ゆかりさんの第10歌集「さくら」が届いた。
2010年3月、砂子屋書房・刊。
カバー、帯。
なお「三月書房」のホームページでは、後払いで注文ができ、詩歌句の本も豊富であり、身近の書店が取引していない出版社の本を取り寄せる時、使ってみる値打ちがある。
この歌集の前半では、彼女らしい飛躍した比喩や、新しいオノマトペが読めて、楽しい。
後半は、鬱病と認知症を病む父親を詠んだ歌が、多くを占める。
以下に7首を引く。
リーダーは白猫らしき三匹をり天文台の春のくさはら
父をなだめ姑(はは)をなだめて過ぎし日の夜更けせつけんの泡であそべり
歯ブラシをえんぴつと言ふこの小さな老人が、はい、わたしの父です
一人子のわれのかなしい幸福は認知症の父を一人占めする
父のなかの小さき父が一人づつ行方不明になる深い秋
はるかなるかげろふのなかの獣見ゆ充分にひとり泣きたるのちは
ゆかりさんゆかりさんと呼びながら夕日になつて落ちてくるちち
この歌集には、この他にも、哀切な歌が多い。
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