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2010年9月の25件の記事

2010年9月29日 (水)

「コスモス」10月号

 結社歌誌「コスモス」の、2010-10月号を読みおえる。

 ただし初めから、「その一集」特選欄までと、「COSMOS集」、「コスモス新鋭特集」(4名、各7首)、「新・扇状地」(2名、各15首)、それに小随筆欄「風鳥派」などを読んだのである。

 「COSMOS集」などの作品を読んでいると、若い感性にハッとする時がある。

 その中で、「COSMOS集」のS美衣さんの次ぎの作品(117ページ上段)に、付箋を貼った。

トマト缶五つも空けて週末のソース作りは魔女の気分だ

 料理の楽しみを知らない僕だけれど、料理の楽しみ、不思議さが伝わってくる作品だ。

2010年9月27日 (月)

村上春樹「意味がなければスイングはない」

003  村上春樹の音楽批評集(裏表紙の紹介文では、「音楽エッセイ」となっている)、「意味がなければスイングはない」を読みおえる。

 文春文庫、2008年・刊。

 ジャズ、クラッシック、ロック、フォークソングなどに就いて、かなり長い批評が10編、載っている。

 僕はそれらについて、ほとんど知らないが、楽しく読み進むことができた。

 彼のやわらかい文体と、本音に近い言葉(時には苦言を呈する)に惹かれて。

 そして、彼は自分の文学観(自作を含めて)に就いてほとんど語らないが(最近、長編インタビュー集が出たそうだけれど)、ランニングについて語った言葉や、音楽について語った言葉に、ちらとそれが表れる。たとえば以下のように。

 「そして年齢的なことを言えば、僕は、これもあらゆる芸術の領域において、より『ゆるく、シンプルな意味で難解な』テキストを求める傾向にあるかもしれない。」

2010年9月26日 (日)

「蛇儀礼」と「歌壇」10月号

001  書店「KaBos 新二の宮店」へ行き、2冊を買う。

 1つは、ヴアールブルク「蛇儀礼」(岩波文庫、2008年・刊)である。

 ドイツの美術史家・ヴァールブルクが、19世紀末のアメリカ・インディアンの蛇儀礼(宗教儀礼)を、見聞をもとに論じた講演の記録である。

 僕はこれまで、この本が出ていることを知らなかった。

 モノクロの写真が多数挿まれて、理解の助けになりそうだ。

 他に歌誌「歌壇」10月号を買う。特集は「百年前の名歌集を読む-明治に何が詠まれたか」である。

 本当のお目当ては、こちらである。

 毎月1回、この店に寄って「歌壇」新号を買い、気に入った文庫本などがあればそれも買う、というのが慣例になってきた。

2010年9月25日 (土)

詩誌「水脈」42号

001  福井県吉田郡に在住の詩人、T健隆さんが、同人詩誌「水脈(すいみゃく)」42号を送って下さった。

 同人詩誌「群青」の発行所、「群青の会」(僕方)宛てである。

 この42号は、「福井詩人会議・水脈20周年記念号」である。

 扉を含めて14名の詩の他、20周年記念の集いの報告、14名による特集「詩と出会った頃」、I信夫さんの連載評論「すずこ記」⑧⑨、Nえりさんの短編小説「窓際の流木」など、多彩である。

 詩では、A杏子さんが年老いた義父を描いた「秋陽」の第3連が、とくに心に残った。

   秋陽

      (前略)

近ごろはなにをしても機嫌がいい

――ありがとう

と言ってもらえるから

なにをしても私は嬉しい

ついついなにができるだろうかと

さがしてしまう

     (後略)

 

2010年9月24日 (金)

村山美惠子「有涯」

001  大阪府に在住の歌人、村山美惠子さんの第4歌集、「有涯(うがい)」を読みおえる。

 平成17年、短歌研究社・刊。

 著者は、「水甕」選者・編集委員。

 帯文に「才気を抑えて」とあるように、おとなしい作品が多いようだ。

 「有涯(うがい)」とは、僕の初めて接する言葉で、「広辞苑」第5版によると、「限りあること。転変して常住ならない世界。この世。」とある。

 著者の「あとがき」では、「表現上での複雑さ、単純さはおもしろさの質とは比例しない」と小田切秀雄の言を引いていて、意識的にその作風を追っているようだ。

 以下に7首を引く。

外堀の橋に待つ間をまろき月白さ増しつつ低く浮かべり

裏の家取り払はれて月かげを庭の狸はほしきままにす

葺きかけの屋根の向かうに茶髪見えシャツ見えやがて人登りきつ

檸檬握り載せ場を捜すどの部屋も崩れむばかり山をなす本

無事帰国せりてふメール散歩より戻り来れるごとくに穏し

犀川に映せる独りの影を打つ霙たちまち霰に変り

月を背に子犬歩めり括られてゐる身に頓着なくいそいそと

2010年9月23日 (木)

水上芙季「静かの海」

003  東京都に在住の歌人、水上芙季さんが第1歌集、「静かの海」を送って下さった。

 2010年9月、柊書房・刊。

 彼女は歌誌、「コスモス」会員、「棧橋」同人。

 この歌集には、彼女の19歳から20代最後までの作品から、490首を選び収める。

 彼女が仕事と恋の他に、短歌に深く関わっている事は、良い事だと思う。短歌を読み詠む事は、人生を豊かにするだろう。

 彼女は、短期大学から4年制大学に編入学し、東京大学教務課から文部科学省へ転職し(歌集の末では、そこも退職しているが)など、向上心の強いかたのようだから、歌人として将来が期待される。

 以下に8首を引く。歌集の前のほうの作品が多い。

4時限目まどを見やれば中庭の木々がゆつくり色かへてゆく

女子五人集ひカメラ付ケータイの彼を見せ合ふ<雨夜の品定め>

六月の染井霊園しんしんと作家、詩人らの論争聞こゆ

アイスティーの氷はとうに溶けました来ない帰らう帰らない、来た!

平行に走る電車は回送であまたの死者を乗せて明るむ

強き雨降る杉林に立ち止まる ああまつすぐな雨、杉、わたし

ぼんやりと桜見てゐる君のこと見てゐるわれを桜は見てた

シャチ好きで涙もろくて達筆なこと知る前に恋に落ちてた

2010年9月21日 (火)

「松本たかし句集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第2巻(昭和56年・刊)より、5番めの句集、「松本たかし句集」を読みおえる。

 原著は、昭和10年、欅発行所・刊。

 彼の父祖は代々の能役者であったが、長男の彼は病弱で能役者を継ぐことを諦めた。生涯、定職に就かず、父や後援者の援助を受け、句作に専心した。

 彼にはこのあとに、遺句集を含め、4冊の単独の句集がある。

 昭和31年没、享年51.

 松本たかしの句は、耽美的とされるが、日常の光景や行為を吟じた句に、僕は惹かれる。

 以下に5句を引く。

春草や光ふくるゝ鳩の胸

うつし世の月を真上の踊かな

砂日傘子犬がくゝりあるばかり

煤掃に用なき身なる外出かな

ゆるやかに落葉降る日を愛でにけり

 

2010年9月20日 (月)

詩誌「アリゼ」第138号

003  兵庫県に在住の詩人、S陽子さんがお便りを添えて、同人詩誌「アリゼ」第138号を送って下さった。

 2010年8月、アリゼの会・発行。

 「アリゼ」は、兵庫県在住の詩人をおもな同人とする詩誌である。

 M大介さんの「星空の帰り道」は、人間関係のちぐはぐさにリアリティを感じる。

 N佳枝さんの短詩、「コートによせる」「ポケット」2編は、新しい思い寄せによる暗喩があり、暖かい。

 F優子さんの「記憶」には、自分たちの記憶を、世代を継ぐ者たちが語り継いでいってほしいという、切実な願いがある。

 Y幸子さんの「花の島」は、日本極北の島、礼文島の短い夏に咲き盛る花々を描く。以下に短いが、最終連を引用する。

     花の島

         (前略)

大きな苦しみを経て 自身を花束に現じた島を

海を覆う霧の上から

利尻岳が見ている

 またエッセイも多く、活気がある。

2010年9月19日 (日)

DVD「忍ぶ川」

Dvd_003  今年9月8日の記事「三浦哲郎氏逝く」に、コメントでこぐま星座さんより「忍ぶ川」のDVDを観るように勧められ、僕も後日に借りると応えた。

 3連休2日めの今日、「TSUTAYA」でDVD「忍ぶ川」を借りてきて、さっそくパソコンで観た。約束を果したわけだ。

 熊井啓・監督、加藤剛・栗原小巻・主演。

 このドラマはモノクロだった。僕には、カラーのポスターを見た記憶があって(あるいは間違いかもしれない)、ずっとカラー映画だと思っていた。

 ドラマで、初夜の場面は話題になったが、僕はその前の、身内(新郎新婦と、新郎の両親と姉の、5人)だけの結婚式で、新郎の父が「高砂」を謡い出して母と姉との3人ともども取り乱してしまう(身内のうち続く不幸にはただ耐え続けてきたのに)場面に、最も心打たれた。ドラマではよく現されていないようだけれど、僕は原文を思い出した。

2010年9月18日 (土)

白石公子「日曜日の捜しもの」

002  白石公子(しらいし・こうこ)のエッセイ集、「日曜日の捜しもの」を読みおえる。

 朝日文庫、1999年・刊。

 彼女は有力な詩人で、思潮社の「現代詩文庫」にも入っている(161巻、定価1,223円)。

 彼女には、詩人としての見上げる部分があり、30歳台の独身女性として気安い部分もあるだろう。

 そういう人物の、個人的生活のトリヴィアルなあれこれを、エッセイとして公開するのだから、人気を呼ぶ。

 元は、「アサヒグラフ」1994年5月20日号から、1年余りにわたって連載された文章である。

 彼女にはそれ以外のエッセイ集もあり、「もう29歳、まだ29歳」(新潮文庫)が、とくに話題となった。

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