村山美惠子「有涯」
大阪府に在住の歌人、村山美惠子さんの第4歌集、「有涯(うがい)」を読みおえる。
平成17年、短歌研究社・刊。
著者は、「水甕」選者・編集委員。
帯文に「才気を抑えて」とあるように、おとなしい作品が多いようだ。
「有涯(うがい)」とは、僕の初めて接する言葉で、「広辞苑」第5版によると、「限りあること。転変して常住ならない世界。この世。」とある。
著者の「あとがき」では、「表現上での複雑さ、単純さはおもしろさの質とは比例しない」と小田切秀雄の言を引いていて、意識的にその作風を追っているようだ。
以下に7首を引く。
外堀の橋に待つ間をまろき月白さ増しつつ低く浮かべり
裏の家取り払はれて月かげを庭の狸はほしきままにす
葺きかけの屋根の向かうに茶髪見えシャツ見えやがて人登りきつ
檸檬握り載せ場を捜すどの部屋も崩れむばかり山をなす本
無事帰国せりてふメール散歩より戻り来れるごとくに穏し
犀川に映せる独りの影を打つ霙たちまち霰に変り
月を背に子犬歩めり括られてゐる身に頓着なくいそいそと
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