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2010年9月24日 (金)

村山美惠子「有涯」

001  大阪府に在住の歌人、村山美惠子さんの第4歌集、「有涯(うがい)」を読みおえる。

 平成17年、短歌研究社・刊。

 著者は、「水甕」選者・編集委員。

 帯文に「才気を抑えて」とあるように、おとなしい作品が多いようだ。

 「有涯(うがい)」とは、僕の初めて接する言葉で、「広辞苑」第5版によると、「限りあること。転変して常住ならない世界。この世。」とある。

 著者の「あとがき」では、「表現上での複雑さ、単純さはおもしろさの質とは比例しない」と小田切秀雄の言を引いていて、意識的にその作風を追っているようだ。

 以下に7首を引く。

外堀の橋に待つ間をまろき月白さ増しつつ低く浮かべり

裏の家取り払はれて月かげを庭の狸はほしきままにす

葺きかけの屋根の向かうに茶髪見えシャツ見えやがて人登りきつ

檸檬握り載せ場を捜すどの部屋も崩れむばかり山をなす本

無事帰国せりてふメール散歩より戻り来れるごとくに穏し

犀川に映せる独りの影を打つ霙たちまち霰に変り

月を背に子犬歩めり括られてゐる身に頓着なくいそいそと

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