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このブログの10月15日(4日前)の記事で、購入を報告した詩集、谷川俊太郎「62のソネット +36」を読みおえる。
集英社文庫、2009年7月第1刷。
この本には、1953年に詩集「62のソネット」として出版された62編と、未発表の36編、合計98編のソネットと、その98編の英訳が収められる。ただし僕は、英訳は読まなかった(読めなかった)。
「62のソネット」は、僕が若い時に読んでいる。
戦後詩史で、主導的「荒地」グループと、左翼的な「列島」グループが相克している時、谷川俊太郎・茨木のり子・吉野弘らの、のびやかな若手グループ「櫂」の登場は、衝撃的だったろう。
敗戦の痛手が少なく、中産階級出身の青年たちだった。
この詩集について、未発表だった詩編にも、共感できる作品がある。
少し違和を感じたのは、旧仮名遣いを新仮名遣いに改めたからだろう。
「62のソネット」55番より、後半の2連を引く。
62のソネット 55
(前略)
私は捨てられた皿だ
満たされぬことを知りながら
なお待つ形のままで‥‥
そしてもし世界の中で私も役目をもっているとしたら
そのように佇むことが私に課せられている
単行本の「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」を読みおえる。副題は、「村上春樹インタビュー集 1997-2009」である。
2010年9月、文藝春秋・刊。
この本には、内外メディアからのインタビュー、全18編が載っている。本には、彼の文学(翻訳を含む)の秘密がたくさん明かされていて、彼の文学のファン(愛読者)なら、必読の1冊である。
たとえば、人が二階建ての家に住んでおり(1階は食事・団欒の場、2階は個室で読書などをする)、地下1階のことをたいていの作家は表現するが、自分はさらに地下2階のことを表現できる、と述べている。自分がその世界に入っていき、現実に戻ることが出来るのは、能力と訓練に由る、とも述べているようだ。
また彼は、小説のストーリーの展開やエンディングを、前もって考えていないそうだ。机の前に座ると、フィクションが5感に感じられるように、展開するという。
また、翻訳、短篇・中編・長編の各小説が、うまくサイクルして、自分の小説が発展して来た、とも述べている。
他にも色いろ、明かされているので、539ページの厚さに挑む人が、多くあってほしい。
左の写真は、「千輪咲き」(実際はもっと少ないだろう)である。
根の強い品種に、花のたくさん咲く品種を、接木すると聞いた、記憶がある。
右の菊人形の1場面は、NHK大河ドラマにテーマを借りて、「龍馬と越前」の1景である。
本当の目的は、季刊同人歌誌「棧橋」の105号に出詠する、12首連作を詠む事だった。
何回も「たけふ菊人形祭」の連作を載せて貰っているけれど、見方も変わるし、今回はテーマを持って詠んだ(?)ので、ご容赦を願う。
幸い12首が出来て(ケイタイのメモに書きながら)、帰宅してからパソコンのワードで打って、USBメモリに収めた。これから推敲する予定である。
角川書店「増補 現代俳句大系」第2巻(昭和56年・刊)より、6番めの句集、渡辺水巴「白日」を読みおえる。
原著は、昭和11年、交蘭社・刊。
この句集は、「水巴句帖」を含む以後の3句集からの抄出と、それ以後一年余りの新句より成り、全523句である。
彼は東京に生まれ、旧制中学校を中退後、俳句を志し、生涯定職を持たなかった。
デリケートな季節感と、洗練されつくした都会人的な情緒とが、表現されたと評される。ただし僕が田舎者なのか、それらがあまりわからない。
以下に5句を引く。
釣竿の竹大束や鰹船
離れ咲く牡丹は淡し椎落葉
渓流の音に雨添ふ田植かな
月光にぶつかつて行く山路かな
雑煮待つま八ツ手に打ちし水凍る
10月3日(日曜日)の第5回苜蓿忌(このブログに記事あり)のおり、県内在住の歌人、足立尚計さん(「短歌人」所属)より、彼の第3歌集「サルペドンの風斬る朝に」を頂いた。
平成21年7月、六花書林・刊。
彼が編集する、県内を主とする同人歌誌「地楡(われもこう)」に出詠したのが、僕の短歌の発表の最初である。ある無茶な連作を出したところ、「これは載せられない」だけでなく、「普通に詠んだ作品があったら、送ってください」と返事を受けて、20首ばかりをワープロで打って出したのが初めであり、彼は僕の短歌の恩人である。
彼は大阪に生まれ、大学卒業後、福井で就職し、生活している。
福井女性史や橘曙覧などに関わる著作もある。
この歌集の「サルペドン」は、青筋揚羽蝶の学名より採った、という事である。この題名からも察せられるように、彼には繊細なところと、壮士ふうに勇んだところが同居している。
内容は、平成16年の福井豪雨災害を詠んだ「くずれ川」と、居住地を好む「越前を誉むる歌」の2大章より成る。
以下に7首を引く。
冷蔵庫・仏壇・テレビ水葬の棺のように足羽川行く
足羽川決壊したり。兎抱く娘背負って二階に上る
満月が瓦礫の山を照らすとき再生という言葉つぶやく
便乗しゴミを捨て行くならずもの態と湿らせ泥塗ると聞く
お前は白い花を好んだ雪が家を囲んだ朝さえカラーを活けた
いつまでも線路見ている俺の背を追い越して行く帰郷燕は
専門という語彙には口がない。無口なものよ学芸員も
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