詩誌「果実」64号
平成23年4月、果実の会・刊。
県内の教師(及びそのOB)を同人とする詩誌である。
6名の12編の詩、他に4編の散文が載る。
詩では、T篤朗さんの3編、「電信柱―残った響き―」「歩道橋の下で」「線路1 ―踏み切りで―」が興深い。中原中也を思わせる、喪失感だろうか。
しかも彼は、評論(と呼ぶべきだろう)の「写生の短歌」において、正岡子規の短歌1首、「瓶にさす藤の花房短ければ畳の上に届かざりけり」についてB5判4ページをもって、巨細にわたって論ずる(少し授業っぽいけれど)力があるのだ。
以下に「歩道橋の下で」(全5連)のうち、初めの連のみ引く。
歩道橋の下で
T篤朗
通りすがりの歩道橋の下
いつも見る親子
それがここしばらく見ないのだ
わたしは気になる
毎日そばを通るとき
車のスピードを落とす
今日もやはりいなかった
(後略)
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