今日の午前11時より、三国町・東尋坊の荒磯遊歩道にある詩碑の前で、詩人・則武三雄さんの忌祭「葱忌」が催された。忌名は、詩人の優れた詩の題名に由る。
則武さんは、全国的には無名な詩人として終わったとされる。
しかしその膝下には、有力な詩人・作家・評論家が集まり、「則武学校」とまで称された。無私に福井県の文学の興隆に尽くした人である。現代詩作家・荒川洋治さんも生徒の1人だった。
碑前の「偲ぶ会」には40名を越える人たちが集まった。世話役の方の挨拶(写真はその場面)後、詩碑に献花が行われた。スプレー咲き(枝咲き)のカーネーションを1本ずつ、全員が献じた。
そのあと、地元高校の演劇部女子生徒3人により、則武三雄さんの詩が朗読された。
東京よりおいでのご子息の謝辞のあと、某お爺ちゃんの俗曲(詳しくはわからない、内容は故・詩人に関わり深い鴨緑江を唄ったもの)披露により、碑前の「偲ぶ会」は終わった。
さらに場所を移して、食事と懇話会が行われるのだが、僕はここで辞して車で帰路に就いた。
角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第4巻(昭和56年・刊)より、13番めの句集、佐野青陽人(さの・せいようじん)の「天の川」を読みおえる。
原著は、昭和16年、曲水社・刊。
師・渡辺水巴(俳誌「曲水」)の序文、「序にかへて」の自句1句、大正12年~昭和16年を3期に分けての293句、後記を収める。
俳号には謡からの意味もあるが、「西洋人」のもじりの意味もあり、戦前の1時期にアメリカ人の経営する米国貿易会社に勤務した事による。
その時期の経験に由ってか、翼賛的な吟を作さなかった。
以下に5句を引く。
更くる夜のおとがひまろき雛かな
別るゝもまた愉しげの雛かな
うつむいて菊に触れたり角かくし
大夕立乾きし砂の円覚寺
蛾を食みし蜥蜴熱砂に口拭ふ
先の4月23日のブログで購入を報告した2冊のうち、昨日に紹介した「歌壇」5月号に続き、小川洋子の小説「シュガータイム」を読みおえる。
中公文庫、2011年15刷。
大量の食事を欲求する大学生・私(過食症とはされず、太りもしない)が主人公である。
彼女と「吉田さん」はカップルであり、共寝はするけれども性関係はもたない、交際を続けていた。
その「吉田さん」が、彼の友人の精神科医に頼まれて、対話療法のパートナーとなった女性患者と接している内に、「僕たちは互いに含まれあっているのです」(別れの手紙より)という惹かれ方をし、その女性とソ連へ留学すると告げ、「わたし」は別離してしまう。
背丈の伸びない病気の弟・航平、友人の真由子を配し、彼女たち4年生の秋、彼女たちの大学の野球部リーグ戦最終戦を観覧し、別離の傷と過食からの解放を描いてフィナーレとなる。
あとがきで著者の書く「わたしがどうしても残しておきたいと願う何か」は、簡略化するのは失礼かも知れないが、「男女には性関係を越えた愛がある」という事だろうか。
結社歌誌「コスモス」2012年5月号を読む。
ただし初めより、「その一集」特選欄までと、「COSMOS集」、「新・扇状地」など。
今号に発表の「第49回桐の花賞」は、入会5年めのK真紀さんが受賞した。彼女は「コスモス」入会以前より、短歌活動をしていた。
ブログを運営し、僕もちょくちょく見させてもらっている。
4月号からなのだけど、幾つか改新の事柄があり、「コスモス」の活気が増していると、僕は感じる。
付箋を貼ったのは、「その一集」特選の、S礼さんの次の1首(30ページ下段)。
春立つといへどもつづく雪の日々紅あざやけき花の絵を描く
僕は絵を描けないので、春の前には、ネットの「さくら品種図鑑」(約140種類)や「ことりのさえずり」(写真と鳴き声あり)を観ることが多い。
先日、書店「KaBoS Wasse店」へ行き、2冊を買った。
歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2012年5月号は、創刊300号である。
高野公彦氏の特別作品百首「ひとり道」が載る。
また小島ゆかり氏の岡野弘彦氏への連続インタビューも始まった。
小川洋子の小説「シュガータイム」は、中公文庫、2011年15刷。
彼女の小説は「博士の愛した数式」を読んだ(2011年5月17日の記事に、からめの感想あり)。
「シュガータイム」は純な恋物語のようで、「汚れつちまつた悲しみ(中原中也の詩より)」を感じるオジサンには、惹かれるものがある。
彌生書房「阪本越郎全詩集」(昭和46年・刊)より、詩集「貝殻の墓」と「貝殻の墓 拾遺」を読みおえる。
原著は、昭和8年、ボン書店・刊。
本編の「貝殻の墓」「軽井沢の蝶」の章は、1編4行の詩が19編続く。その他の詩も短く、終編の「対照」のみがやや長い。
ハイカラなウイット(機知)の詩編である。会話や俳歌でなら良いかも知れないが、詩(短詩ではあるが)においては、西欧異国風とはいえ、物足りない気がする。
以下に1編を引く。
幸福阪本越郎
バグダッド―――カイロ間飛行情報アンゴラ産の黒猫はもう流行(はや)らない
聖者たらずんば乞食たれ
いつまでも堅い翼の天使が翔んでいます
最近のコメント