永井陽子「小さなヴァイオリンが欲しくて」
青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊、写真はその表紙)より、最後の歌集「小さなヴァイオリンが欲しくて」を読みおえる。
原著は、2000年、砂子屋書房・刊。
592首、高瀬一誌・解説。
彼女は、父50歳、母40歳の、次女として、1951年に生まれた。22歳で父を亡くし、41歳ころに母を送った。
2000年、48歳の若さで亡くなった。生涯、独身であった。
「小さなヴァイオリンが欲しくて」」は、没後に刊行された遺歌集である。
この歌集も、全歌集も、生前の友人の篤い努力によって、刊行されたと聞く。
以下に6首を引く。
無造作に右へ右へとよぢれゆく風を見しかな疲れたる目は
死して行く宙とはいづこ飛行機の大きな銀の腹を見上ぐる
今はもうかの樟のみが記憶する喪服のわたし二十歳のわたし
癪の種拾ひ集めてベランダのプランターにぞ蒔かむとおもふ
こころより外れし箍がかげろふのもえたつ坂をころがりゆけり
死ぬ前にいまひとたびをかぎりなく美しきもの見たしと思ふ
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