« 2012年7月 | メイン | 2012年9月 »

2012年8月の32件の記事

2012年8月31日 (金)

山際淳司「逃げろ、ボクサー」

Cimg6381 山際淳司のノンフィクション集、「逃げろ、ボクサー」を読みおえる。

 角川文庫、平成7年・3版。

 彼は、1948年・生、1995年・没。スポーツ・ノンフィクション作家として活躍し、他に小説・エッセイ・翻訳なども執筆したが、胃癌により46歳の若さで亡くなった。

 名作をたくさん残して、生き急いだかに見える。

 僕はこれまで、「エンドレス・サマー」(2011年2月2日の記事)、「スローカーブをもう一球」(2011年2月18日の記事)、「ルーキー」(2011年3月30日の記事)を読んでいる。

 彼は重大な試合の重大な場面ばかりを描いているのではない。

 表題作の「逃げろ、ボクサー」も、バンタム級ボクサー(日本のタイトルさえ取れなかった)の若年時代を追った作品だ。

 「スクイズ・フォーエバー」も、翌年春のセンバツ高校野球を目指す札幌地区の一回戦を描いている。

 丹念な取材と、強い思い入れと、惹きつける文体で、スポーツ・ノンフィクションをメジャーにしたと、僕は讃仰する。

2012年8月30日 (木)

中日新聞夕刊

 中日新聞の8月20日夕刊に、僕のソネット1編が載った。

 中日詩人会詩話会例会作品として、昨年に詩集を出版した、同県の他の二かたの作品と共に。

 以下に引用する。

  光

    新サスケ


時どきに

しばしばではないが

視界の一点が光る

青い輝点がみえる


自分の考えでは

目の神経が

一つずつ壊れるとき

光るのだろう


重ねた読書に加え

家のパソコン遊びで

目が疲れるのだろう


ゆっくりと目が

見えなくなるとして

悔いはない


2
写真素材集サイト「足成」より、ひまわり畑の1枚を。

2012年8月29日 (水)

エッセイ集「ネパールのビール」

Cimg6376 日本エッセイスト・クラブ編「’91年版ベストエッセイ集 ネパールのビール」を読みおえる。

 文春文庫、1994年・刊。67編。

 8月21日に紹介した、「’90年版 チェロと旅」に次ぐものである。

 著名作家や大学教授など、社会的地位の高い人の、日常のひとコマ、ある場面の回想などが多くて、僕としては興浅い作品もあった。

 田中博子(たなか・ひろこ)さん(主婦)の「筍」は、母の認知症が進んで行くさまに気づきつつ、優しい気持ちで接したいという思いに満ちている。

 土屋繁子(つちや・しげこ)さん(当時・中央大学講師)が、「当世学生『本離れ』気質」の末尾で、「本の形態が不要になる時代、コンピューターに取って替わられる時代、などというものがいずれやって来たとしたら、」と記して、現在の「電子書籍の出現」を予言していたようで、興深い。

2012年8月28日 (火)

春日井建「未青年」

Cimg6371_2 「春日井建全歌集」を読み始める。

 砂子屋書房、2010年・刊。

 箱、帯、本体にパラフィン紙カバー、栞あり。

 全9歌集と、年譜・解説・解題・初句索引を収める。

 彼の本を僕は、国文社・現代歌人文庫で正・続の2冊、思潮社の追悼版「春日井建の世界」を、読んだきりである。

 彼には多くの批評、評伝があるだろうが、僕は読んでいない。畏れ多い、おこがましい、などの言葉が胸内に飛び交うが、拙い感想を書き綴っていく積もりだ。

 彼の第1歌集「未青年」を読みおえる。

 原著は、1960年、作品社・刊。彼の17歳~20歳までの短歌、350首を収める。三島由紀夫が序文を寄せた。

 性的傾向から、世への反逆者を志向するようだが、両親とも歌人であるなど良家に育った彼には、踏み込めないようだ。

 自分の思いに素直だという意味で、健康的である。

 以下に6首を引く。

テニヤンの孤島の兵の死をにくむ怒濤をかぶる岩肌に寝て

火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ

失ひし心かなしみ歩む背に綿雪の死衣が被さりてくる

額髪が風にみだれて荒くれの弟子は無瑕の夜を憎むなり

軟禁の友を訪ひゆく夜くらく神をもたねば受難にも遭はず

わが肩に垂れて青年の掌のごとき緑の房よ葡萄樹のした

2012年8月27日 (月)

「探訪 日本の庭 九」

Cimg6366
 写真集「探訪 日本の庭 九 東海・北陸」を見おえる。

 小学館、昭和54年・刊。

 寺社の庭が多く、他に武家屋敷の庭などが、紹介されている。

 名古屋城旧二の丸、三の丸の、枯滝石組は豪壮である。

 摩訶耶寺庭園(静岡県)の紹介に、「本庭は長らく荒廃したままになっていたが、昭和43年に調査が行われ、その後直ちに復元された。」とあり、不思議な事だ。藤枝静男氏の「眠りを覚ます東海の名園」が、事情の1部を伝える。

 わが国最古の作庭伝書「作庭記」の系譜について、重森完途氏の文章で学んだ。

 長野県の「光前寺庭園」(江戸初期・作庭)の東庭では、大石を積み上げて水を流し、龍門瀑石組とする意匠が佳い。

 朝倉館址庭園は、朝倉氏遺跡の内にあり、南陽寺址の枯滝石組、諏訪館跡の滝添石には巨石が用いられ、見応えがある。朝倉氏遺跡には何度か行っているので、これからは心して観よう。

2012年8月26日 (日)

文房具、他

 ショッピング・センター「パワーセンター ワッセ」へ行き、買い物をした。ワッセは駐車場750台ぶん、テナント20店。

 「ワッセ」は大きな1つのビルに多くのテナントが入るのではなく、郊外に広大な敷地を確保し、中央の駐車場のめぐりに各テナントがそれぞれ店舗を構えている。

  • 事務用品店「コピーエクスプレス」にて、モンブラン万年筆のスペアインク、ブルーブラックを1パック。
  • 同店にて、A5判のクリア・ブックカバー、1枚。結社誌「コスモス」を読む時に、被せるもの。
  • 同店にて、A5判封筒、100枚入り、2袋。同人詩誌「群青」の送付用、等。
  • 「KaBoS ワッセ店」にて、クラシック映画のDVDをセールしていたので、イタリア映画「自転車泥棒」を。

2012年8月25日 (土)

平田利栄「海の駅舎」

Cimg6360 平田利栄さんの第2歌集、「海の駅舎」を読みおえる。

 2001年、雁書館・刊。445首。

 彼女は「人」所属、「人」解散後は「滄」「華」所属。

 父の死、老母のことを含め、生活を丹念に詠んで、好感が持てる。

 語彙の斡旋がやや不得手のようで、自身も自覚しているが、類型的句がやや多いようだ。

 たとえば「身じろがず待つ」「近ぢかと見ゆ」など。

 40代に入って初めての教職に就く、郷里の老母を家に引き取る、など優しく頑張り屋の方のようで、先が待たれる。

 以下に7首を引く。

廃線の枕木を焼く火の蒼し広場にひとりしやがみて目守(まも)

本番に弱き男のものがたり読みつつ思ひ当たる人あり

ふるさとの昼間のバスに乗り込める多くは通院帰りの人ら

身をかたく教へ子の名前聴きてゐる卒業合否判定会議

縁ふかき順序に釘を回し打ち父の柩はつひに閉ぢらる

村人につひになれざる母に似て我も方言つかふことなし

沖縄の幹線道路走りゆくナンバープレートなき米軍車

2012年8月24日 (金)

金尾梅の門「古志の歌」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、6番めの句集、金尾梅の門(かなお・うめのかど)「古志の歌」を読みおえる。

 原著は、昭和18年、青磁社・刊。780句。

 彼は長く富山県にあって、句界で活躍した。のちに上京。

 戦争吟がまれにあるが、自然と人事のまじわる俳句に挟まれて、遠く観ているようだ。例えば、以下のように。

 出征歓送 一句

どつと起る歓声にまた飛雪かな

 以下に4句を引く。

蛍狩りつなぎゆく子の手のあつき

小春くれしうつろを電車ひびき来ぬ

みぞれきし笠かたむけて蕪とる

夜や更けし月のこぼるゝ炭俵

Phm10_0566
ダウンロード・フォト集より。

残暑厳しい地の方、涼しげな渓流の1枚をどうぞ。

2012年8月23日 (木)

「リルケ書簡集」全4冊

Cimg6345


























 国文社の「リルケ書簡集」全4冊を購入した。

 国文社に問い合わせると、在庫はあるが古びて、汚れがあったりする、との事。値引きの話も無いので、注文しなかった。

 Amazonで調べると、2、3巻は古本で、4巻は新本であったので、注文した。1巻は、「日本の古本屋」より、東京都の古書店「古書ワルツ」に注文した。

 それらが届いて、4冊が揃った。宛て先別に編集してある。

 僕はそれと別に、人文書院の2冊本「リルケ書簡集」(横向きだが、下に写真を添える)を所蔵している。

 贅沢と思われるかも知れないが、2冊本が年月日順なので、4冊本の購入が数年来の願望であり、わずかな臨時収入があったので、購入したものである。

Cimg6348

2012年8月22日 (水)

「歌壇」9月号

Cimg6344 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2012年9月号を読む。

 小島ゆかりさんの岡野弘彦氏へのインタビュー「歌は世につれ情(よ)は歌につれ」は、第5回めとなり、岡野氏の話が個人崇拝へ向かいそうな危うさを、僕は感じる。

 巻頭作品20首に、柏崎驍二氏の「家号」がある。

 高野公彦氏の「短歌練習帳」は、20回めに至った。先達の歌の知恵は受け継ぎたいが、設問形式である事が引っかかる。

 還暦を過ぎた僕は、もうテストを受けたくない。ただし、楽をして手に入る知恵は、ないかも知れない。

 特集「アラ卒歌人のうた」は内容も良く、編集も良い。ただ、わが身にはまだ遠い事のように、僕には思えてしまう。

ブログランキング

  • 応援のクリックを、よろしくお願いします。
  • ブログ村も、よろしくお願いします。

最近のトラックバック

ブログパーツ

  • ツイートをフォローしてください。
  • 3カウンター
  • アクセス解析

更新ブログ

Powered by Six Apart
Member since 04/2007

日本ブログ村

  • 日本ブログ村のリストです。

人気ブログランキング

  • 応援の投票を、お願いします。

アンケート