伊藤麟「蛍まつり」
1980年(昭和55年)、伊麻書房・刊。
僕と氏との関わりは、「コスモス」2008-2月号の氏の追悼特集について書いた、このブログの2008年1月26日の記事を読んでいただきたい。
その誌も残っていないが、代表歌、年譜なども載っていたと記憶する。
「コスモス」では「螢」の字を用いる人が多い中、当時でも「蛍」の字を用いる、或は箱の歌集名を横書きにするなど、先進的な考えの歌人だったようだ。
また詩的な表現の短歌も多い。
写真は、箱の表である。染みが多くある。
以下に5首を引く。
つばらかに想ひ出せねど悔恨のわれのくれなゐ柘榴(ざくろ)咲きたり
前肢を揃へて水を舐(な)むる虎、年逝かむここ日本の園に
あはれなる絵島の墓に来て屈みさて立ち上がり四方(よも)の寂けさ
峰移る霧の微粒は顔を打ち押し黙りたり山上の九人
船と岸テープ投げ合ふ喚声の露語を解せず吾は異邦人
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