鈴江幸太郎「夕映」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、7番めの歌集、「夕映」を読みおえる。
先の6月22日に、6番めの歌集「屋上泉」を紹介した記事(←リンクしてある)以来の、紹介である。
原著は、1959年、林泉短歌会・刊。
歌人の還暦に至る3年間の、530首を収める。
この時期、特別な事件はなく、主宰する歌誌「林泉」の編集、歌会、吟行などに励んだようである。或る女性に思いを寄せるらしい歌群もある。
以下に7首を引く。
船のゆきのままに移ろふ靑山のここにも高く家群(やむら)こもれり
寂しきは我といづれぞ瀨々の音ひびく日を夜をしづまりて臥す
アララギの友のすくなきふるさとに井坂吉惠(ゐざかきちゑ)も死にゆきにけり
雨具ぬれて岬端(さきはな)に立つは朝くらき海を見張れり群れくる鰤(ぶり)を
あくがれは齡(よはひ)とともに深くして夕日ヶ濱をまた何時か見む
折紙(をりがみ)の上にうつ伏し眠りたる幼き孫を見るしづごころ
川波の響の中に横(よこた)はり聲とどかねば言はぬもしたし
涼を求めて。
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