西東三鬼「夜の桃」
角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、4番めの句集、西東三鬼「夜の桃」を読みおえる。
今月10日の記事(←リンクしてある。クリックすればジャンプする)で紹介した、橋本鷄二「年輪」に継ぐ句集である。
原著は、1948年、七洋社・刊。
自序、敗戦前の50句、戦後の250句を収める。
西東三鬼(さいとう・さんき、1900~1962)は、戦前の京大俳句事件で検挙された。戦後は現代俳句で活躍した。
僕はこの全集では、初めて戦後俳句を読んだ気がする。この巻の加藤楸邨「火の記憶」は空襲を吟じ、彼の「野哭」はまだまみえていない。
西東三鬼「夜の桃」は、芸術的前衛性と実存的感覚でもって、敗戦後の社会を捉え得たと、僕は思う。現実は知らないのだけれども、同時期の戦後詩に若く感動した作品と、共振を感じるからである。
以下に5句を引く。
水枕ガバリと寒い海がある
寒燈の一つ一つよ国敗れ
中年や遠くみのれる夜の桃
秋耕のおのれの影を掘起す
めつむりし孤児に烈風砂を打つ
花ハス公園に、ここ何年か、行っていない…。
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