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2013年9月の28件の記事

2013年9月20日 (金)

ネクラーソフ「デカブリストの妻」

Cimg7224 ネクラーソフの物語詩「デカブリストの妻」を読みおえる。

 岩波文庫、2006年・4刷。僕はこのリクエスト復刊の時、新本を買った筈だから、7年を経てから読んだ事になる。

 1825年12月14日、ロシアの帝政に反対する将校らが、デカブリストの乱を起こしたが、鎮圧された。

 死刑5人、徒刑86人、流刑18人、他の罰が下った。この徒刑・流刑でシベリヤへ流された指導者層(名門の青年が多かった)の、9人の妻が夫を追ってシベリヤへ行った。

 貴族の富と名誉を捨て、家族・友人を捨て、夫への情愛と誇りを選んだ女性の、高潔さには心打たれる。

 内容は「公爵夫人 トゥルベツカーヤ」と「公爵夫人 ヴォルコーンスカヤ」に別れる。

 前者は主人公と、シベリア行きを押しとどめようとするまわりの者の、科白がほとんどを占め、劇詩と呼び得る。

 後者は、年老いて帰還した夫人が孫たちに、成長してから読むようにと書いた、手記の形を取っている。

 世界的名作を、年老いて読むのも、良い事だ。

2013年9月19日 (木)

小畑庸子「孤舟」

Cimg7222 小畑庸子さんの第7歌集、「孤舟」を読みおえる

 2006年、角川書店・刊。

 水甕叢書第787篇、角川書店「21世紀歌人シリーズ」の1冊。

 彼女の歌は、時どき武張った作品がある。

 女性が現代で、力まなければならない場合もあるだろうが、文芸の表現で力んでほしくない。

 彼女はまた、短歌に新しい表現(と僕にはおもわれる)を取り入れる事に、執心している。

 新場面や俗語などなのだが、短歌の表現の領域を拡げるものとして、心をうつ。

 それらから絞って、以下に7首を引く。

ビニールホースの小さき傷が垂直に噴く春の水土に吸はるる

フリーランスの戦場記者の死、その妻は笑みをり皮膚の下にて哭きて

実よりも虚のやや多きひと日暮れ明日の我にわづか間のあり

カード式キー失せいたく困られしことも聞きにき扉の前に

風吹けばわがセンサーを刺激せり子が植ゑゆきしマリーゴールド

太りたる鳩と電車の去りしのち両足跳びに冬雀来る

ざんばら髪ふり落したる森木木に荒武者一騎鞭くれてゆく

2013年9月18日 (水)

ウメモドキ

Imgp0349

Imgp0351_2 



 庭のウメモドキの実が、赤く色づいてきた。

 葉が落ちて、実があらわになったところが、見頃かも知れない。

 そして冬の近づく頃、小鳥たちの食べ物になる。

 写真は、左がほぼ全体、右が近づいて写したものである。

2013年9月17日 (火)

歌誌と小説

Cimg7216

Cimg7218 今日の午前中に、書店「KaBoS ワッセ店」へ行き、総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)の10月号を買った。

 今号にはミスがあり、目次全体が9月号ぶんのページだった。部数が多いから、珍本にならないだろう。

 帰宅して昼食を摂ると、結社歌誌「コスモス」10月号が届いた。

 僕の歌は(10首出詠の内)、3首選だった(残念)。

 Amazonのマーケットプレイス「Urotauso」に注文していた、古井由吉の小説、「水」(1980年、集英社文庫)が届いた。

 文庫本棚に寄せてある、古井由吉の文庫本小説が、これで6冊になった。行方不明の文庫本がある事も、わかっている。いつに読み始めるものか。

2013年9月16日 (月)

「その一集」読了!

 結社歌誌「コスモス」2013年9月号の、「その一集」を読みおえる。

 初めより「その一集」特選欄までと、「COSMOS集」、「新・扇状地」などの読了は、先の8月28日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「コスモス」の5クラスのうち、真ん中のこのクラスの会員が(僕を含めて)最も多く、今号は全214ページのうち71ページだった。「コスモス」会員の吹き溜まり場、と揶揄されるが、抜け出したいものだ。

 「コスモス」の詠風は慣れて、読みやすい。しかし「コスモス」以外の歌人の作品も、総合歌誌、歌集(リサイクル書店の棚にも並んでいる!新刊を買えば、もっと良い)、全歌集等で読むべきだ、と僕は我田引水する。


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2013年9月15日 (日)

詩誌「アリゼ」第156号

Cimg7212 兵庫県にお住まいの詩人、S陽子さんが、お便りを添えて、同人詩誌「アリゼ」第156号を送って下さった。

 今年7月21日の記事(←リンクしてある)で紹介した、同誌・第155号に続く。

 2013年8月31日・刊。

 隔月刊という事で、旺盛な活動である。

 僕の参加する同人詩誌の内、「群青」は年3回、「青魚」は年2回くらいの発行だから。

 今号は、詩19編、評論・紀行2編、詩集評2編、エッセイ8編を収める。

 巻頭のK清仁さんの「映し世」は、きしむ時代のメルヘンを抒情して、危機を表わしている。

2013年9月14日 (土)

吉永みち子「気分はグリーングラス」

Cimg7209_3 吉永みち子のエッセイ集「気分はグリーングラス」を読みおえる。

 集英社文庫、1993年・刊。

 彼女の本は、2011年3月8日の記事(←リンクしてある)にアップした、「気がつけば騎手の女房」以来、2冊めである。

 彼女は、母、妻(のちに離婚しているが)、子(母に対して)、吉永厩舎(夫が騎手を引退し、調教師になったので)のおかみさん、ノンフィクション作家として、超多忙だった時期である。

 忙しさや、ストレス解消行動も、話題にする。

 僕が惹かれたのは、畑で葉菜や苺を育てる、野菜栽培の話だ。

 彼女は、様々な公務(〇〇審議会の委員、等)、テレビ・ラジオへの出演(レギュラーも多い)も果している。

2013年9月13日 (金)

「ハイネ全詩集 Ⅲ」

Cimg7207 「ハイネ全詩集」全5巻より、「Ⅲ」を読みおえる。

 角川書店、1972年・刊。井上正蔵・完訳。

 今年8月7日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「Ⅱ 新詩集」に継ぐ本である。

 この「Ⅲ」には、「アッタ・トロル」と「ドイツ 冬物語」が収められる。

 「アッタ・トロル」は、大道で踊りをさせられていたが、逃げ出した熊の物語である。

 以前に文庫本でか読んでいたが、今回も読んだ。

 何かの寓意である事は明らかだが、社会情勢が実感できないので、誰のどういう所を揶揄しているのか、よく判らない。

 「ドイツ 冬物語」には、期待していた。故国の季節の冬と、時代の冬を重ね合せた、荘重な物語を期待したのだ。

 しかしこの篇には、フランスより13年ぶりに帰国した詩人の、故国への愛着と嫌悪が並んでいるようだ。詩人の胸中が、冬の状態だった。

 まだこのあと、「ロマンツェーロ」と「最後の詩集」の2大冊が待っている。

 

2013年9月12日 (木)

前田静枝「葉桜の道」

Cimg7198

 前田静枝(まえだ・しずえ)さんの第1歌集、「葉桜の道」を読みおえる。

 2010年、不識書院・刊。

 彼女は、幼い頃より短歌に親しんだが、結婚、育児、海外渡航によって、作歌を中断。夫を亡くされて落ち込んでいた頃、家族の勧めで短歌教室に通い、1997年に「未来」入会。

 初めは近藤芳美・選を受けたが、近藤・没後は桜井登世子の選を受けている。

 大人しい人柄ながら、それをも自省する風で、作品に気品を与えている。

 以下に7首を引く。

椋鳥も尾長もむれてついばめり汗し刈りたる芝庭のかげ

逃げるなと吾が手を強くにぎりしめ夫は幻覚のなににおびえき

戦場に兄を送りし日の母が画面をよぎるイラク派遣に

かきつばたふかむらさきに群れ咲ける水際をゆけばはなびらゆらぐ

雨のふる成城の町をただ歩む「近藤芳美をしのぶ会」も過ぎ

かかる日の来るとは、思わず涙してオバマの勝利宣言をきく

ふるさとの胎内川の上空を朱鷺とぶと今朝のニュースは伝う

2013年9月11日 (水)

鈴江幸太郎「石蓴集」

 初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、14番めの歌集、「石蓴集」を読みおえる。「石蓴」は国語辞典で「あおさ」と引けば出て来る。他の読み方が、あるかどうか知らない。

 今月2日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「鶴」に継ぐ歌集である。

 原著は、初音書房、1979年・刊。

 420首を収めて、序文もあとがきも無い。

 彼の歌には、字余りが多いなど、破調とも取れる作品が稀にある。ここではピックアップしなかったけれども。

 以下に7首を引く。


藤波に寄する思ひも幾十年けふ淸瀧の瀨の上の花

瀨々の音河鹿のこゑの高まれば闇に相追ふ螢の光

下りゆく池の汀におのづから朽ち果てし幹仆れかさなる

松すこし見ゆるは海に入るあたりただ川波のひろく押し行く

一夜寝て友に隨ふ瀨の上の道は河鹿の乏しらに鳴く

線香の燃え盡くるまでみなぎらふ暑き光に妻は立つらし

さまざまの思ひに見たる富士の嶺けさも安らぎて仰ぐにあらず

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