奥本守「泥身」
奥本守(おくもと・まもる)さんの第2歌集、「泥身」を読みおえる。
まひる野叢書第156篇、百日紅叢書47篇。
1997年、ながらみ書房・刊。512首。
彼は、原発銀座(半径55キロ以内に原子炉15基がある)と呼ばれる若狭に住み、農業の傍ら、労務者として原発・他の現場で働いている。
原発・事故の危険性を第1歌集「紫つゆくさ」(僕は未読)でも詠い、原発現場を解雇された。現在の福島原発事故を、どう詠んでいるのか、とても気になる。
また挽歌、とくに著者43歳で得た息子が21歳で交通事故死した、嘆きの1連もある。
以下に7首を引く。
絶対にないと言われし細管のギロチン破断す美浜二号機
田植え終え勤務(つとめ)先なる原発に来しわれ解雇を告げられて立つ
壁厚く窓なき大き室(へや)を掃く個体廃棄物ここに積まれん
人間の焼かるる音を近く聞く骨(こつ)となるべきすさまじき音
幻覚にあらず地震に倒壊の街に火の海広がりてゆく
ナトリウム漏洩は設計ミスなるか隠さず正しく原因を言え
ようやくに二十一歳勤めして十ヵ月目に子は逝く早し
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