佐野四郎「湖畔の薄」
「コスモス」の先達歌人、佐野四郎の第4歌集、「湖畔の薄」を読みおえる。
1978年、伊麻書房・刊。579首。
この歌集は、造りがとても豪華である。
箱には和紙(と思われる)の題簽を貼り(題は宮柊二の選と筆に成る)、本体には宮柊二の短冊2つ、会津八一の短冊1つを、緻密なカラー写真(当時では並々ではなかったと思われる)で収めている。また本体にはビニールカバーが巻かれている。
彼は富士山に近い山梨県に住み、執筆と農耕の生活を送ったようである。歌の多くは自然詠である。
また言葉の殆んどは和語であり、漢字のヨミにも訓読が当てられている。
以下に人事詠を多く5首を引く。
訪ふ人の全く絶えたる古墓の天屋(あまや)に杉の枯葉は嵩む
めらめらと奔る炎にあそびゐつ仕事終りし野に藁焚きて
杳き日に手を引かれ父と越えし峠(たを)径を狭めて葛の葉茂る
下り来し山川二つ出合ひつつこの高原に清き波上ぐ
街辻に延べし蓆に鈴振りて乙女ら清(さや)に稚児の舞まふ
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