秋元不死男「瘤」
角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、2番めの句集、秋元不死男「瘤」を読みおえる。
今月5日の記事(←リンクしてある)で紹介した、石田波郷「惜命」に継ぐ句集である。
原著は、1950年、作品社・刊。365句、後書を収める。
秋元不死男(1901年~1977年)は、新興俳句運動に活躍するが、1941年、俳句弾圧事件に遭い、2年の獄中生活を送り、敗戦まで作品発表しなかった。
「瘤」は「獄」吟とその他の作品に分かたれる。「獄」吟も、多く回想吟であるが、獄中吟がある。後書で彼は、「たとへ瘤であったにせよ、その瘤の痛さと、瘤をこしらへた相手の手は、終生忘れることはできない。」と書きつけている。
以下に5句を引く。
降る雪に胸飾られて捕へらる
友らいづこ獄窓ひとつづつ寒し
冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯
獄門を出て北風に背を押さる
蟹かくる航空兵の墓裏へ
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