高浜虚子「虹」連作
「筑摩書房版 現代日本文学全集(66) 高浜虚子集」(1957年・刊)より、短篇連作集とも呼ぶべき、「虹」「愛居」「音楽は尚ほ続きをり」「小説は尚ほ続きをり」を読みおえる。
「虹」以下の4編は、療養所で出会った森田愛子と伊藤柏翠が、愛子の三国の家で(結婚せずに)母と3人で暮らし、俳句に励むけれども、愛子は若くして亡くなってしまう物語である。虚子はその家を、何度か訪れている。
虚子の愛子宛ての葉書に3句「浅間かけて虹の立ちたる君知るや」「虹たちて忽ち君の在る如し」「虹消えて忽ち君の無き如し」があり、愛子の句に「虹消えてすでに無けれどある如し」「虹の上に立ちて見守るてふことも」「虹の上に立てば小諸も鎌倉も」がある。
「小説は尚ほ続きをり」では、柏翠、杞陽(虚子・門下)からの来信で埋められて、文学的富の収奪という気もする。
1947年~1948年の発表である。エッセイとも、写生文とも、短編小説とも言える、連作である。
坂井郡(現・坂井市)三国町は、僕の家から車で1時間ほどの所で、高校生時代から森田愛子の名前を知っていたので、親近感がある。彼女の句集は持っていないけれども。
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