斎藤史「杳かなる湖」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年5刷)より、「杳かなる湖」74首(のちに75首)を読みおえる。
1940年~1943年の作品を収めた歌集「朱天」―先の8月28日の記事(←リンクしてある)で紹介した―と、1946年以降の作品を収めた歌文集「やまぐに」の間をつなぐ、1943年~1945年の作品より、のちに拾って全歌集に、未刊歌集として収めたものである。
後記に「短歌研究」側から勧められ、とあるので、誌上に発表され、未収録となったのだろうか。
後記に「嘆きの歌は発表は出来ず、その間に散り失せた」とある。また発表されたであろう戦争詠が省かれていると、僕は推測する。
以下に3首を引く。
花よりもさやけく降れる雪見ればいのち涸(か)れずと思ふひととき
赤黒く空にのぼれる火の下に死につつあるもわが東京は
焦(いら)つ子を物置の蔭につれて来て山見よといふ二階借りの身は
(旧漢字を新漢字に替えた所がある)。
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