斎藤史「ひたくれなゐ」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年・5刷)より、第8歌集「ひたくれなゐ」を読みおえる。
第7歌集「風に燃す」は、今月7日の記事(←リンクしてある)で紹介した。
原著は、1976年、不識書院・刊。翌年、同歌集により、第11回「迢空賞」受賞。
1967年~1975年の、715首を収める。
1968年には老母が両眼失明し、1973年には夫が脳血栓で倒れ、個人的には苦労の多い時期だったと思われる。歌風は華やかさを増すけれども。
以下に7首を引く。
望み断ち人去りゆきし開拓地の道消して降る雪片無限
鈴振るは鈴の音きよく聞かむため魂のめざむるよりけざやかに
埴輪の眼ふたつ穴なしてわらへども母の見えざる眼は笑はざり
全身に傷ちりばめて雉落ちぬ花火のごとき散弾のなか
みづからに科せし流刑(るけい)と下思ふこの寒冷の地にながらへて
流民のまぶた閉づれば残像の過ぎし山河も永遠(とは)なる異郷
侵しくる死の影やらひ鬼やらひ打つ豆つぶて病廊に散る
注:1部、旧漢字を新漢字に、替えた所があります。
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