小島ゆかり「さくら」
京都府の書店「三月書房」のホームページより注文していた、小島ゆかりさんの第10歌集「さくら」が届いた。
2010年3月、砂子屋書房・刊。
カバー、帯。
なお「三月書房」のホームページでは、後払いで注文ができ、詩歌句の本も豊富であり、身近の書店が取引していない出版社の本を取り寄せる時、使ってみる値打ちがある。
この歌集の前半では、彼女らしい飛躍した比喩や、新しいオノマトペが読めて、楽しい。
後半は、鬱病と認知症を病む父親を詠んだ歌が、多くを占める。
以下に7首を引く。
リーダーは白猫らしき三匹をり天文台の春のくさはら
父をなだめ姑(はは)をなだめて過ぎし日の夜更けせつけんの泡であそべり
歯ブラシをえんぴつと言ふこの小さな老人が、はい、わたしの父です
一人子のわれのかなしい幸福は認知症の父を一人占めする
父のなかの小さき父が一人づつ行方不明になる深い秋
はるかなるかげろふのなかの獣見ゆ充分にひとり泣きたるのちは
ゆかりさんゆかりさんと呼びながら夕日になつて落ちてくるちち
この歌集には、この他にも、哀切な歌が多い。
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