カテゴリ「読んだ本」の1643件の記事 Feed

2016年9月 2日 (金)

越谷オサム「陽だまりの彼女」

Cimg9003 1昨日(8月31日)の記事で、入手を報せた4冊の内、越谷オサムの小説、「陽だまりの彼女」を読みおえる。

 新潮文庫、2011年発行、2015年49刷。

 僕(奥田浩介)が中学生時代に、イジメを助けた同級生、渡来麻緒(わたらい・まお)と25歳になって再会し、恋し、彼女の両親に反対されて駆け落ち、結婚する。

 熱々の2人のようで、幾つもの小さな影が、伏線として張られる。10ヶ月後に、彼女は浩介以外の人から彼女の記憶を消して、消え去る。

 彼女は動物の?の生まれ変わりであったらしく、姿を変えて浩介の前に現れて、不安の残るハッピーエンドとなる。

 再会と結婚生活の夢中さに憧れ、彼女を失った彼の嘆きに感情移入する。

 ライトな文体で書かれた、ディープな恋物語である。

2016年9月 1日 (木)

現代詩文庫「茨木のり子詩集」より「未刊詩編から」

 花神社「茨木のり子全詩集」(2013年・2刷)より、1969年に思潮社より刊行された、現代詩文庫20「茨木のり子詩集」の「未刊詩編から」を読みおえる。書き下ろしを含む15編である。

 先行する第3詩集「鎮魂歌」は、先の8月26日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 「あいなめ」は、漁獲の減ったアイナメに言寄せて、「別れも告げず 脅迫もせず 彼方へと/去りに去りゆくものの気配/ことあげしないことがなにかひどくおそろしい」と、背を向けて去ってゆく者たちを描いているようだ。

 「首吊」は、父の検死した首吊を、「この世の酷薄さをキュッとしぼって形にしたような/てるてる坊主は/時として 私のなかで いまだにゆれる」と、自死した弱者を悼む。

 中流市民の女性詩人として、最も柔軟な心を保った人だった。

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、イチジクの1枚。

2016年8月30日 (火)

橘曙覧「春明艸」

 kindle本「橘曙覧全歌集」より、第3集「春明艸」を、タブレットで読みおえる。

 同・第2集「襁褓艸」は、先の8月21日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 橘曙覧の歌は、清貧の生活を平易に詠んだ印象があるかも知れないが、画賛なのか題詠や、知友へ贈る作品も多い。

 なおこの集は、有名な連作「独楽吟」を含む。

 以下に5首を引く。

君としも知らで足おと門(かど)にせし駒迎へにもはしらざりけり

うつくしき蝶ほしがりて花園の花に少女の汗こぼすかな

朝夕のまじはり深くしげりゆく竹ならはばや重ぬらむ世も

たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能(よ)くかけし時

たのしみは庭に植ゑたる春秋(はるあき)の花のさかりにあへる時々

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、イチジクの1枚。

2016年8月28日 (日)

「日本の天然記念物 2」

Cimg8985  講談社「日本の天然記念物 2 動物Ⅱ・天然保護区域」を見おえる。

 (照明の関係で、写真が拙いものになって済みません)。

 同・「1」は、先の8月19日の記事(←リンクしてある)に、アップした。

 基本的に写真集であるが、解説やエッセイも入る。

 「動物Ⅱ」では、爬虫類(ウミガメ、トカゲ、等)、両生類(オオサンショウウオ、モリアオガエル、等)、魚類(ウグイ、イトヨ、アラレガコ、等)、他、原索動物・甲殻類、昆虫類、剣尾類・軟体動物が取り上げられている。

 「天然保護区域」では、北海道、沖縄県、高山など、豊富な生息の残る区域が指定されている。

 1984年・2刷。169ページ。A4判よりやや大。

2016年8月27日 (土)

「コスモス」9月号「COSMOS集」読了

 結社歌誌「コスモス」2016年9月号より、「COSMOS集」を読みおえる。

 同・「その一集」特選欄・読了は、先の8月24日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「COSMOS集」は、「その二集」と「あすなろ集」の、特選欄である。

 「栴檀は双葉より芳し」というか、いきなり特選6首デビュー(普通の特選は、5首選)という会員もいた。しかしこの2つの集は、努力で抜けられると読んでいる。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。I・史織さんの「クローバー」5首より。

足元に群れ咲きてゐるクローバー目があふごとく四葉を見つく

 同じ「COSMOS集」のO・慧美子さんの「蕗のつくだ煮」5首には、「「よいことがあります」とレジの店員は千百十一円のつり銭くれぬ」があり、好調は運もあるのだろうか?

Photo「フリー素材タウン」より、夕陽の1枚。

2016年8月26日 (金)

茨木のり子「鎮魂歌」

 花神社「茨木のり子全詩集」(2013年・2刷)より、第3詩集「鎮魂歌」を読みおえる。

 第2詩集「見えない配達夫」は、先の8月18日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「鎮魂歌」は、1965年、思潮社・刊。14編。

 「花の名」は、彼女風の父への挽歌である。こののちも幾つかの(多くの?)挽歌を書いた。

 「私のカメラ」「大男のための子守歌」は、夫への相聞だろう。夫が大男だったかは、別として。

 「鯛」は、最終行に「愛もまたゆうに奴隷への罠たりうる」と戒めている。

 長編「りゅうりぇんれんの物語」は、強制連行を扱うが、後半に美文美談調になったようで惜しい。

Photo「フリー素材タウン」より、夕陽の1枚。

2016年8月25日 (木)

歌誌「歌壇」9月号

Cimg8976 先の8月15日の記事(←リンクしてある)で、届いた事を報せた歌誌2冊のうち、総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2016年9月号を、ほぼ読みおえた。

 巻頭20首4氏は、年齢順らしい。トップバッターの尾崎左永子(以下、敬称略)の「鎌倉雑唱」には、もっと期待したのだが。

 ファンめいた心理があって、その理由が同誌(?)に連載された「栄花物語」(?)の現代語訳が優れていたからだ。

 少し脱線するが、河野裕子と森岡貞香の全歌集が、なぜ発行されないのだろう?僕は買う積もりだし、ファンは多いだろうに。

 栗木京子による高野公彦へのインタビュー「ぼくの細道うたの道 4」は、第1歌集出版、職場の先輩・小野茂樹(歌人)の交通事故死、等に及んで詳しい。

 

2016年8月24日 (水)

「コスモス」9月号「その一集」特選欄・読了

 結社歌誌「コスモス」2016年9月号より、「その一集」特選欄を読了した。

 先行する同・「月集」は、先の8月20日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「その一集」特選欄の掲載は、9選者×5名×5首の、225首である。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。Y・とし子さんの5首より。

ぢぢばばと暮らさぬ子らが帰り来て担ぐ御輿のやがてさびしゑ

 父母の実家に帰省して、田舎の祭のお神輿を担ぐ孫息子らだろうか。言葉の運びがなめらかで、結語の「ゑ」が効いている。

Photo「フリー素材タウン」より、夕陽の1枚。

2016年8月22日 (月)

「梅崎春生全集」第2巻(4)

 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻(1984年・刊)より、4回めの紹介をする。

 同・(3)は、先の7月1日付け記事(←リンクしてある)にアップした。

 僕が今回読んだのは、「鏡」、「鬚」、「朽木」の短編小説3編である。

 「鏡」は、社長・老金庫番・私(裏帳簿作成役)・給仕娘の4人の戦後の会社で、「私」が貧しい老金庫番を唆して、大金を盗ませる話である。

 「鬚」は、仮病で4ヶ月、会社を休んだ「私」が、女に逢うために鬚を伸ばして、失敗する話である。

 「朽木」は、「ふじ子」と同棲(?)する「私」が泥酔して、終電車の終点まで行ってしまい、ホームで夜を明かす話である。「ふじ子」との不遇な関係や、共に夜明かしする人々を描いている。

 3編とも、自虐的な、破滅の縁まで行く、戦後らしい不幸の物語である。

Photo「フリー素材タウン」より、夕陽の1枚。

2016年8月21日 (日)

橘曙覧「襁褓艸」

 kindle本「橘曙覧全歌集」より、第2集「襁褓艸」を、タブレットで読みおえる。

 第1集「松籟艸」は、8月3日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 このkindle版では、詞書(ことばがき)が元のままのようで、それらを省略した幾つかの全歌集註釈版に優るようである。

 まれに国粋的な歌があって、戦時中に利用されたかと思う。

 以下に5首を引く。

朝かぜにゆられて落(おつ)るささ栗に小笠(おがさ)うたるる秋のみ山路

はしたなくしか鳴(なき)たてて山里の垣ねすぎゆく此夜ごろはも

見に来よときのふいひける山寺のもみぢゝりぬと聞くはまことか

一日経ば一日近づく故さとの空なつかしみ道いそぐらむ

さき出(いで)てまだいはけなきをみなへしいかでか君にまかせらるべき

Photo「フリー素材タウン」より、夕陽の1枚。

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