カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2016年8月16日 (火)

金子兜太「少年」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、17番めの句集、金子兜太「少年」を読みおえる。

 先行する加藤楸邨「山脈」は、先の8月11日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 原著は、1955年、風発行所・刊。497句。

 「少年」は、共著を除いて、金子兜太(かねこ・とうた、1919年~)の第1句集であり、後年の発展・活躍を細かく知らない僕は、その点からの評価は成しにくい。

 以下に5句を引く。

わらんべの蛇投げ捨つる湖の荒れ

パンの実の灯を得て青し手紙開く

方々にひぐらし妻は疲れている

河氷り橋脚汚れ吾等生きる

共に小さき妻子の冷えた手を握る

Photo「フリー素材タウン」より、ひまわりの1枚。

2016年8月11日 (木)

加藤楸邨「山脈」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、16番めの句集、加藤楸邨「山脈」を読みおえる。

 先行する、栗山純夫「科野路」は、この8月2日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「山脈(さんみゃく)」は、1955年、書肆ユリイカ・刊。487句。

 加藤楸邨(かとう・しゅうそん、1905年~1993年)の第9句集、戦後・第3句集になる。

 敗戦後の戦争責任・追及が過ぎ、肋膜炎が回復期に入り、著者あとがきで「私はもう一度振出しに戻って歩き始めてゐる感じだ。」と述べている。

 以下に5句を引く。

水のむと片目つぶれば十三夜

黄金虫灯に酔ひ兜虫は攀づ

鉛筆で指さす露の山脈を

春嶺の脈うつを蹴り起きあがる

黴干すや売りしか焼きしか書乏し

Photo「フリー素材タウン」より、ひまわりの1枚。

2016年8月 2日 (火)

栗生純夫「科野路」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、15番めの句集、栗生純夫「科野路(しなのじ)」を読みおえる。

 先行する原子公平「浚渫船」は、今年6月8日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 原著は、1955年、長谷川書房・刊。536句。

 1945年~1955年の句を収め、敗戦を区切りにしたのは潔い。

 ただし「科野路」は、栗生純夫(くりゅう・すみお、1904年~1961年)の第5句集であり、敗戦までの句を「山路笛」(1946年、信濃郷土誌出版社)にまとめられる、自身と周囲の状況が、あったからの事である。

 根源俳句、社会性俳句の盛んな中で、穏やかな句風は、今となって価値が高い。

 以下に5句を引く。

鷹の嘴朽枝光らせ巣を工む

刃のあとを粗くのこして橇つくり

木の蛙もつとも高き辺に喚べり

減り減りしきやうだいすするとろろ汁

颱風の山野眼鏡の枠にあふれ

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、ダリアの1枚。

2016年6月 8日 (水)

原子公平「浚渫船」

 年刊句集「福井県」第54集を読みおえ、今年3月17日の記事(←リンクしてある)、石原八束「秋風琴」以来の、「現代俳句大系」(角川書店)第10巻(1972年・刊)に戻る。

 今回、僕が読んだのは、原子公平「浚渫船」である。

 原著は、1955年、風発行所・刊。

 金子兜太の序、554句、細見綾子の跋、あとがきを収める。句の前半は、戦前の作品である。

 原子公平(はらこ・こうへい、1919年~2004年)は、戦後、「社会性俳句を推進、論作ともに活躍する」(三省堂「現代俳句大事典」2005年・刊に拠る)。

 以下に5句を引く。

四方(よも)の蟬鳴き出づる朝父死せり

根深汁すすり泣く喉(のど)痛みけり

月白の丘に煮炊きの火の手見ゆ

牡蠣飯も当座の気負いも母に享く

母と乗るロマンスカーや稲稔る

Photo「フリー素材タウン」より、花菖蒲の1枚。

2016年5月26日 (木)

年刊句集「福井県」第54集(5)

 年刊句集「福井県」第54集(2016年3月、福井県俳句作家協会・刊)より、5回め、最後の紹介をする。

 同(4)は、先の5月14日付けの記事(←リンクしてある)にアップした。

 今回は、161ページ~213ページ(作品集最終ページ)の、53ページ、106名の1060句を読んだ事になる。

 伝統長く広がり大きい文芸だから、新機軸を出すのはなかなか困難だろう。寓話やフィクションに走る場合もあるだろう。

 今回、僕が付箋を貼ったのは、次の1句。M・鈴子さんの「こぼれ萩」10句より。

靴紐を結びなほして梅一輪

 「一輪」にフィクションを感じないでもないが、意気込みをよく表している。

Photo 「フリー素材タウン」より、薔薇の1枚。

2016年5月14日 (土)

年刊句集「福井県」第54集(4)

 年刊句集「福井県」第54集(2016年3月、福井県俳句作家協会・刊)より、4度めの紹介をする。

 同(3)は、先の5月7日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 今回は、前回に続き、121ページ~160ページの40ページ分、80名800句を読んだ事になる。

 大衆文芸とされる俳歌について、現代では大衆の知的レベルも上がり、結社の宗匠制でなくとも、同人制でも充分成り立つ。

 結社では、各号の採られる作品数、クラス進級を競う、競争制に拠って、進歩が早い場合があるだろう。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1句。Y・嘉代子さんの「初鏡」10句より。

一重八重百日草に雨宿る

 百日草の種は、たいてい八重(千重?)だから、一重が混じるのは、こぼれ種から生えたものだろう。おのずと庭の荒れた一画を思わせる。

Photo 「フリー素材タウン」より、藤の1枚。

2016年5月 7日 (土)

年刊句集「福井県」第54集(3)

 年刊句集「福井県」第54集(2016年3月、福井県俳句作家協会・刊)より、3回めの紹介をする。

 同・(2)は、今月1日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 僕は購読のみという事で、句集参加費と年度協会費を足した額の半額で、この分厚い貴重な句集を譲ってもらっている。

 もちろん僕の詩と短歌を創る助けにするために読む。どれだけ助けになっているかわからないが、同じ時代、同じ風土を生きる者として、大きな刺激を受けている。

 今回は前回に続き、作品集の81ページ~120ページを読んだ。40ページ、80名の800句を読んだ事になる。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1句。M・甚四郎さんの「雛飾り」10句より。

雛飾り言葉少なに老夫婦

 娘が、雛を連れずに嫁いだのだろう。雛を飾って、娘への思いはあるけれども、言葉にしないのだろう。

Photo 「フリー素材タウン」より、藤の1枚。

2016年5月 1日 (日)

年刊句集「福井県」第54集(2)

 年刊句集「福井県」第54集(2016年3月、福井県俳句作家協会・刊)の、2回めの紹介をする。

 同(1)は、先の4月17日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 どうしても気になるのは、俳句人口の多さ、アンソロジー参加者の多さである。結社やグループの半封建性、排他性は無いのだろうか。俳句は国際化して、そうしていられない事情だろうか。

 また詩型が短いだけに、新鮮さを表わす競争は熾烈で、それが励みにもなっているようだ。

 前回に続き、41ページより80ページまで40ページ、80名の800句を読む。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1句。K・弓子さん(「雪炎」・他・所属)の「秋桜」10句より。

人生は曲がってもよし大根蒔く

 人生で曲がった事のある身には、涙ぐましい。「大根」は「だいこ」と読むか。

Photo 「フリー素材タウン」より、チューリップの1枚。

2016年4月17日 (日)

年刊句集「福井県」第54集(1)

Cimg8757 先の3月16日の記事(←リンクしてある)で届いた事を報せた2冊の内、「平成27年版 年刊句集 福井県 第54集」(2016年3月、福井県俳句作家協会・刊)の、作品欄を40ページまで読み進む。

 1ページ2段、1人1段10句の掲載だから、80人800句を読んだことになる。

 全213ページ、426名、4260句の出句となる。

 1時程の数ではないが(手許の乏しいバックナンバーでは、「平成17年 同 第44集」で650名の出句)、県内の短歌、詩の年刊アンソロジーと比べて、格段に参加者が多い。

 僕が付箋を貼ったのは、巻頭、Y・透思朗さん(福井県俳句作家協会・顧問)の「九回裏」より、無季らしい次の1句。

怖いもの無しの老化や共白髪

 まさに豪壮な老いぶりである。

 

2016年3月17日 (木)

石原八束「秋風琴」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、13番めの句集、石原八束「秋風琴」を読みおえる。

 今月8日の記事(←リンクしてある)に紹介した、野沢節子「未明音」に継ぐ。

 原著は、1955年、書肆ユリイカ・刊。600句。

 戦前(1937年~1944年)の句を含む事、詩人・三好達治に題名を受け、句に教示を受けた事は、不興である。また三好達治を囲む(文章の!)会「一、二句文章の会」を支えた事も不興である(晩年の達治には、幸せだったかも知れないが)。

 三省堂「現代俳句大事典」で見ると、句境の深化、多数の評論、晩年の役職的活躍等もあったようで、一概に否定できない。

 以下に5句を引く。

炎天は蒼し廃墟に貌よごれ

花びらのながるる砂利を歩みけり

星恋の夜は白桃を母とわかち

水澄むやこころの傷を詐りて

血を喀くや梅雨の畳に爪をたて

Photo「フリー素材タウン」より、椿の1枚。

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