カテゴリ「小説」の116件の記事 Feed

2016年9月 2日 (金)

越谷オサム「陽だまりの彼女」

Cimg9003 1昨日(8月31日)の記事で、入手を報せた4冊の内、越谷オサムの小説、「陽だまりの彼女」を読みおえる。

 新潮文庫、2011年発行、2015年49刷。

 僕(奥田浩介)が中学生時代に、イジメを助けた同級生、渡来麻緒(わたらい・まお)と25歳になって再会し、恋し、彼女の両親に反対されて駆け落ち、結婚する。

 熱々の2人のようで、幾つもの小さな影が、伏線として張られる。10ヶ月後に、彼女は浩介以外の人から彼女の記憶を消して、消え去る。

 彼女は動物の?の生まれ変わりであったらしく、姿を変えて浩介の前に現れて、不安の残るハッピーエンドとなる。

 再会と結婚生活の夢中さに憧れ、彼女を失った彼の嘆きに感情移入する。

 ライトな文体で書かれた、ディープな恋物語である。

2016年8月31日 (水)

手許の4冊

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 最近、手許に来た4冊を、紹介します。ツイッターで、本は買わない、と書きながら、買ってますね。

 左は、「水脈の会」から送って頂いた詩誌、「水脈」57号。

 右は、ふいと読みたくなった、砂子屋書房・現代短歌文庫「森岡貞香歌集」。ネットで注文して、支払いは郵便振替で。

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 左は、越谷オサム「陽だまりの彼女」(新潮文庫、2015年49刷)。TSUTAYA某店で、Tポイントも使って。

 右は、岩波文庫「宮柊二歌集」。この夏の重版はすでになく、2010年8刷だった。

 初刷は持っているのだが、…。

 

2016年8月22日 (月)

「梅崎春生全集」第2巻(4)

 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻(1984年・刊)より、4回めの紹介をする。

 同・(3)は、先の7月1日付け記事(←リンクしてある)にアップした。

 僕が今回読んだのは、「鏡」、「鬚」、「朽木」の短編小説3編である。

 「鏡」は、社長・老金庫番・私(裏帳簿作成役)・給仕娘の4人の戦後の会社で、「私」が貧しい老金庫番を唆して、大金を盗ませる話である。

 「鬚」は、仮病で4ヶ月、会社を休んだ「私」が、女に逢うために鬚を伸ばして、失敗する話である。

 「朽木」は、「ふじ子」と同棲(?)する「私」が泥酔して、終電車の終点まで行ってしまい、ホームで夜を明かす話である。「ふじ子」との不遇な関係や、共に夜明かしする人々を描いている。

 3編とも、自虐的な、破滅の縁まで行く、戦後らしい不幸の物語である。

Photo「フリー素材タウン」より、夕陽の1枚。

2016年8月 7日 (日)

石田衣良「池袋ウエストゲートパーク」

Cimg8951 石田衣良(いしだ・いら)の小説集、「池袋ウエストゲートパーク」を読みおえる。

 文春文庫、2003年・12刷。

 僕は彼の小説4冊、「約束」「波のうえの魔術師」「40」「アキハバラ@DEEP」を読んで、ブログにアップして来た。直近の「アキハバラ@DEEP」は、今年5月12日付けの記事(←リンクしてある)にアップした。

 「池袋ウエストゲートパーク」は、石田衣良のデビュー作である。「池袋ウエストゲートパーク」「エキサイタブルボーイ」「オアシスの恋人」「サンシャイン通り内戦(シヴィルウォー)」の4編連作である。

 家業の果物店の手伝いをする、マサ(18歳~19歳?)が主人公となって、殺人事件、麻薬取引、対立する青少年グループの抗争終結、などに関わって行く。

 美しいヒロインも登場する、バイオレンスのフィクションであり、ストレスのカタルシスを誘う。

 IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズとして、既に10冊(僕が知る所)の小説が本になっている。

2016年7月 1日 (金)

「梅崎春生全集」第2巻(3)

 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻より、3回めの紹介をする。

 同(2)は、6月4日付けの記事(←リンクしてある)にアップした。

 今回、僕が読んだのは、「ある顛末」、「贋の季節」、「亡日」の3短編である。

 「ある顛末」、「贋の季節」は、戦後の窮乏と荒廃の様を、特殊なシチュエーションで描いたものであろう。後者は、皮肉が籠もっているかも知れない。

 「亡日」は、召集令状が来たその日に、出征用酒配給切符で得た酒を携えて、旧友を訪ねて酔う話である。二人とも、日本の敗戦を信じていて、暗い酒となる。

Photo「フリー素材タウン」より、蓮の1枚。

 

2016年6月27日 (月)

若山牧水「その他の随筆など」(1)

 Amazonのkindle本「若山牧水大全」の第3部「その他の随筆など」より、初めの10編をタブレットで読みおえる。

 前回の同「樹木とその葉」(3)は、先の6月22日付け記事(←リンクしてある)にアップした。

 第3部が「随筆など」とある通り、今回の10編(「秋草と虫の音」~「姉妹」)にも随筆だけでなく、小説風の「一家」、小説の「姉妹」、写生文風の「鴉と正覚坊」、重厚な紀行文である「熊野奈智山」「木枯紀行」などを含む。

 書かれた時期はわからない。

 なお第3部は、全27編である。

Photo「フリー素材タウン」より、蓮の1枚。

2016年6月16日 (木)

大江健三郎「美しいアナベル・リイ」

Cimg8884 変わらずに本を読む事は好きだけれども、最近は根気がなくなって、詩歌句集でも、分けてここで紹介する場合もある。

 それでも文庫本棚より、カバーの左端が日焼けした、大江健三郎「美しいアナベル・リイ」(新潮文庫、2010年・刊)を読んでみた。文章は意外と読みやすかった。

 内容は、ロリータ傾向には興味が持てなかった。クライストの小説(?)「ミヒャエル・コールハウスの運命」を翻案して映画化するプロジェクトがあり、「私」が脚本を担当したが、挫折した。

 30年後、そのプロデューサーと女優(共に国際的に活躍した)が、再挑戦として、明治維新前後の2つの一揆を、四国の「私」の郷里で舞台化する。

 ここで、6月12日の記事、季刊「ココア共和国」vol.19で、僕が秋亜綺羅さんのエッセイを有意義だ、と書いた事に結びつく。「津波ごっこをして笑える日」で「そろそろ、震災にカーテンコールをさせなければならない、と思うのです」と述べている。

 2つの一揆は、60年安保と68年頃の学生運動ではないか。それら2つを演劇化する事で、半世紀経た怨念を、昇華しようとするのではないか。小説は、ほぼ舞台裏ばかりだが、筋書と予行も1部、描かれている。

 大江健三郎は小説で、三島由紀夫事件や、オウム真理教事件を、翻案して描いて来たと、僕は思ってもいる。

2016年6月 4日 (土)

「梅崎春生全集」第2巻(2)

 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻(1984年・刊)より、2回めの紹介をする。

 同(1)は、先の5月20日の記事(←リンクしてある)にアップした

 今回、僕が読んだのは、「紐」、「蜩」、「行路」の3編であり、戦後に発表された非戦記もの・非従軍ものの初めである。

 「紐」は戦時下の留置所で、贈賄罪を問われる鬼頭と、同房の確信政治犯・六車の話である。鬼頭に絹の紐が与えられ、自殺を示唆される。鬼頭と六車が共に、死を選ぼうとして、迷っている所で終わる。執筆当時、今とは違う世相状況があったのか。

 「蜩」は、作家が出版社に3度めの前借りをしようとするが、首尾が悪く、身重の妻に出向かせる話である。郷里の母と弟、他の出版社の者も絡んで、心理的にねじれた状況をよく描写している。ただし単なる私小説では、ないだろう。

 「行路」は、少女が男と戦争に苦しめられ、地下道に寝泊まりまでしながら、小さな鰻屋を営んで行くまで、おりおりに関わった「私」の視点で描く。戦後風ながら、危うさも作者は見抜いている。

Photo「フリー素材タウン」より、花菖蒲の1枚。

2016年5月20日 (金)

「梅崎春生全集」第2巻(1)

Cimg8842 沖積舎「梅崎春生全集」第2巻(1984年・刊)より、1回めの紹介をする。

 初期の戦記物を集めた第1巻の紹介は、先の5月4日の記事(←リンクしてある)、同・第1巻(6)で過ぎた。

 この第2巻は、戦前の習作と、戦後の初期の風俗ものを集めたようである。

 今回、僕が読んだ、「地図」、「風宴」、「微生」、「不動」の4編(発表年代順)は、いずれも梅崎春生が「桜島」で戦後文壇にデビューする以前、1943年までに同人誌等に発表された、今となっては習作と見做される作品である。

 「地図」、「風宴」に見られる死のテーマ、「微生」に見られる戦時下の鬱屈、「不動」の怠惰など、後に繋がる心情があるようだ。

 また風景・情景の描写の上手さ、わずらわしい心理の描写、なども後に繋がるものだろう。

2016年5月12日 (木)

石田衣良「アキハバラ@DEEP」

Cimg8833 先の4月15日の記事、「最近買った3冊」で紹介した3冊の内、石田衣良の小説「アキハバラ@DEEP」を読みおえる。

 文春文庫、2006年・刊。帯付き、542ページ。

 彼の小説では、2011年9月20日の記事(←リンクしてある)で紹介した「40」他、2冊を読んでいた。

 彼の連作「池袋ウエストゲートパーク」シリーズを、僕は読んでいない。

 「アキハバラ@DEEP」は、6人のオタク青年が、画期的なAI(人工知能)「クルーク」を創出して、それを奪い取ろうとするIT大企業と闘って、奪い返し、理念通り無料でネットの世界に公開する話である。

 その大企業が初め、代金として1人当たり2億円を提示するが、グループは譲らなかった。

 僕ならすぐに譲っていただろう。ただし文章は、アマチュアながら文学に関わる者として、お金を積まれても意に染まないものは書かない(書けない)。

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