カテゴリ「小説」の116件の記事 Feed

2016年5月 4日 (水)

「梅崎春生全集」第1巻(6)

 沖積舎「梅崎春生全集」(全・8巻)の第1巻(1984年・刊)より、最終6回めの紹介をする。

 同・(5)は、先の4月20日の記事(←リンクしてある)で、7編を紹介した。

 今回に読んだのは、「眼鏡の話」、「上里班長」、「ある失踪」、「演習旅行」、「大夕焼」、「年齢」の、6編である。

 戦闘の切迫感ではなく、配属中にメガネのレンズを失くした話、残飯をめぐる話、1兵の失踪帰還の話(逃亡となれば大事件だった)、規律の既に乱れかかった兵の小競り合いの話と、小事だが軍では大事件のストーリーが続く。

 「大夕焼」は、配属中に因縁のあった島へ、18年経て旅する話である。「年齢」は敗戦直後、帰郷する列車の中で、歳若い元・上司に意趣返しをして嫌な思いをする話である。

 戦闘行為が無かった、期間が短かった等、関わりが薄くても、戦争に受けた傷が深い兵はいただろう。

Photo 「フリー素材タウン」より、藤の1枚。

2016年4月28日 (木)

定道明「杉堂通信」

Cimg8809 今月25日の記事で、頂いた事を紹介した、定道明(さだ・みちあき)さんの小説、「杉堂通信(さんどうつうしん)」を読みおえる。

 2016年5月1日・付け、編集工房ノア・刊。

 この小説は、「杉堂通信」「続杉堂通信」の2部に分かれており、ぼくも2回に分けて紹介するつもりだったが、面白くて一気に(1度に、ではない)読んでしまった。

 なお僕が彼をなぜ、「定さん」と呼ぶか、わかった気がする。詩人懇話会の幹事会や催しで会っていた頃、「定さん」と呼びかけていたからである。

 帯で「日記体小説」と紹介されているが、そうではなくて(日付は付されているが)、Aさんと呼ぶ久しく会わない女性への書簡体小説である。

 小説は、老人の日常のトピックスと思い(回想を含む)を、ぶちまけた内容である。喜寿を越えた主人公が、「私はよく泣きます」と心弱くもなり、「それどころか、むしろまともなのはこっちだ位に考えているのですから」と頑固さを示してもいる。「若くして言葉なんかに縛られるのは愚だ」とも述べている。地の文に「つついっぱい」の方言が出るなど、自由な書きぶりは、死を見据えた胆の据わりであろう。

2016年4月25日 (月)

定道明「杉堂通信」

Cimg8809 福井県にお住まいの、詩人・作家・評論家である、定道明さん(さだ・みちあき、定氏、定先生と呼ぶべきところを、さんづけで呼ばせて頂く)が、小説「杉堂通信(さんどうつうしん)」を送って下さった。

 今年1月4日の記事(←リンクしてある)で述べたように、定さんが中心の同人文学誌「青磁」を送って下さっても、重厚なものは読む根気がない。

 2014年8月20日の記事で書いた、彼の評論集「中野重治近景」も通しては読んでいない。

 そんな僕に、貴重な「杉堂通信」を送って下さったのは、自信があり、自身の晩年の思いがあるのだろうか。

 書簡体の文体、老年の思いを描く内容は、興趣深いものである。

 実はもうこの本の半ばくらい、読んでいる。

2016年4月20日 (水)

「梅崎春生全集」第1巻(5)

 沖積舎「梅崎春生全集」第1巻(1984年・刊)より、5回めの紹介をする。

 同・4回めの紹介は、先の3月31日付け記事(←リンクしてある)にアップした。

 今回に読んだのは、「小さな町にて」(やや長め)、「水兵帽の話」、「万吉」、「蟹」、「奇妙な旅行」、「歯」、「山伏兵長」の7短編である。

 「小さな町にて」、「奇妙な旅行」、「歯」の3作品は、戦後の物語で、「歯」はわずかに戦時の事が入るのみでなぜ戦争ものに入っているか判らない。戦後に残る戦時のしがらみを描いて、執拗である。

 戦時ものも、自分より戦争に向かない性格の兵や、敗戦直後の後輩を描いて、かつての衝迫力はない。

 平時の生活の日常に、作家の胸中もまぎれて行ったのだろうか。

Photo「フリー素材タウン」より、チューリップの1枚。

2016年4月15日 (金)

最近買った3冊

Cimg8797 最近、僕が買った3冊の本を紹介する。

 まず窪美澄(くぼ・みすみ、女性作家、1965年・生)の小説、「ふがいない僕は空を見た」。

 新潮文庫、2014年13刷。

 R-18文学大賞、山本周五郎章、受賞。

 本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位、に選ばれる。

 以前にもTSUTAYAで、有名度に惹かれ手に取ったが、冒頭の性描写に驚いて、棚に戻した。

 今回は、Tポイントが300ポイント使えると思ってレジに行ったが、使えなかった。「それなら止めます」と言えずに、買ってしまった。

Cimg8799 ある時、家にいて、ネットに関する歌が1首できた。

 その連想で、ちら読みをした事のある、この小説をどうしても買いたくなった。

 すぐ読みたいというより、手許に置きたい1冊だった。

 石田衣良(いしだ・いら、1960年・生)の小説「アキハバラ@DEEP」。

 文春文庫、2006年・刊。

 Amazonのマーケットプレイスで、1円(+送料257円)。

 帯があり、本文の古びも薄く、1円本の並ぶ中では、よく選んだ方だろう。

Cimg8802_2

 先日、ショッピング・モール「ワッセ」内の書店、「KaBoS ワッセ店」へ久しぶりに行った。

 あるブログの解説書がほしかったのだが、店にはなかった。

 ネット・パソコンの本のコーナーから、次の本を買った。

 「今すぐ使える かんたんTwitter入門」。

 2015年、技術評論社・刊。

 ツイッターをしているが、見様見真似で、ハッシュタグの付け方さえ知らなかった。

 ネット・パソコンの利用では、どんなサービスも、入門書(取説)が必要な僕である。

2016年4月 1日 (金)

有川浩「三匹のおっさん」

Cimg8788 先日、某ドラッグストアで粒ガムを買った帰りに、TSUTAYA某店に寄り、有川浩「三匹のおっさん」(新潮文庫、2014年・刊)を買い、読みおえた。

 帯付き、443ページ、723円(内、Tポイント323ポイントを使う)。

 有川浩(ありかわ・ひろ、女性)の小説は、これまで4冊を読み、直近の「ヒア・カムズ・ザ・サン」は今年1月15日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 帰りの車を出しながら、「しまったかな」という思いが過ぎった。3人を「三匹」と人間扱いしていないからだ。

 還暦を迎えた男性3人が、私設自警団を結成し、町内の悪を成敗する、6話を収める。

 鬱屈のカタルシスにはなるが、私刑や暴力の問題もあり、彼女のバイオレンス物は読むまい、と思った事だった。

2016年3月31日 (木)

「梅崎春生全集」第1巻(4)

 沖積舎「梅崎春生全集」第1巻(1984年・刊)より、4回めの紹介をする。

 3回めの紹介は、先の2月16日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 今回に読みおえたのは、「故郷の客」、「無名颱風」、「小さな町にて」の、3作品である。

 「故郷の客」と「小さな町にて」は、戦後、従軍中の仲間を訪ねる話である。語りかける文体に、親しみを覚えそうになるけれども、従軍小説の衝迫力はすでにない。敗戦後の元軍人同士の心理的絡み合いに、僕は慣れない。

 「無名颱風」は、敗戦による兵団解散の後、多くの者と帰郷途中、強い台風に遭って難儀する話である。命に関わりそうな避難の場面があって、惹き付ける力がまだある。

 この第1巻には、12編の小説(多くは短編)が残っている。

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、花水木の1枚。

2016年2月16日 (火)

梅崎春生「赤い駱駝」「生活」「ルネタの市民兵」

 沖積舎「梅崎春生全集」第1巻(1984年・刊)より、3回めの紹介をする。

 2回めの紹介は、先の1月8日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 今回は、「赤い駱駝」「生活」「ルネタの市民兵」の、3作品を読み終える。

 「赤い駱駝」は、「二見」という「全然軍人に適さない男」(召集前は童話を書いていた)が、終戦直後に発狂して自殺するストーリーである。

 次の「生活」に出て来る老兵たち(40代)が、軍隊で真実の自分を守るため、佯狂、馬鹿、耳が聞こえない、等の擬態を採ったのに、それが出来なかった。

 戦闘に参加する事がなかった小さな関わりに、戦争、敗戦の意味を問い詰めて自死に至ったのだろう。

 誰にともなく物語る口調で、文体に工夫がある。

 「ルネタの市民兵」は、比喩を重ねるなど重厚な描写で、捨石の1市民兵が、逼塞・逃亡から投降に至る過程を描いている。

Photoダウンロード写真集「フォト満タン」より、冬景色の1枚。

 

2016年2月 9日 (火)

国木田独歩「湯ヶ原より」

 Google Play Booksよりタブレットへ、以前に無料でダウンロードした、国木田独歩「湯ヶ原より」を読みおえる。

 「僕」から「内山君」に宛てた書簡で、失恋を告白する態の短編小説である。

 湯ヶ原温泉に療養に来た学生と、その宿の女中である娘が、ともに憎からず思う、プラトニックな恋をした。翌年、再び逢いにゆくと、そのお絹さんは結婚するために帰郷すると宿を出たところで、僕は失恋する、というストーリーである。

 内容はうぶだが、友への語り口調で、口語文体の小説の困難な時期だったろう。

 フィクションの構成、レトリックもさりげない。

Photo「フリー素材タウン」より、蝋梅の1枚。

2016年1月15日 (金)

有川浩「ヒア・カムズ・ザ・サン」読了

Cimg8679 今月10日に購入を報せた、有川浩「ヒア・カムズ・ザ・サン」を読みおえる。

 新潮文庫、2013年・刊。

 僕はこれまで、有川浩(ありかわ・ひろ、女性作家)の小説、「レインツリーの木」「阪急電車」「植物図鑑」を、いずれも文庫本で読んで来た。

 直近の「植物図鑑」は、昨年11月4日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 「ヒア・カムズ・ザ・サン」と「ヒア・カムズ・ザ・サン parallel」が収められる。

 前者の立派な父とその友人より、後者の才能がなくだらしない父親に思い入れが多くなる。

 それは僕や多くの父親が(と思う。社長や大臣は別として)、妻子に充分に為していない、という思いがあるからだろう。

 仲介役(主人公・古川真也)の重要さが、よくわかる。

 小さな旅があり、明日以降2、3日、記事更新を休みますので、宜しくお願い致します。

ブログランキング

  • 応援のクリックを、よろしくお願いします。
  • ブログ村も、よろしくお願いします。

最近のトラックバック

ブログパーツ

  • ツイートをフォローしてください。
  • 3カウンター
  • アクセス解析

更新ブログ

Powered by Six Apart
Member since 04/2007

日本ブログ村

  • 日本ブログ村のリストです。

人気ブログランキング

  • 応援の投票を、お願いします。

アンケート