植野京好「天に汲む水」
千葉県に在住の歌人・植野京好さん(「未来」所属)の第2歌集「天に汲む水」を読みおえる。
2002年、砂子屋書房・刊。
1ページ2首組で、カバー図柄とともに、贅沢な造りの本である。三田富子さんと佐伯裕子さんの文による栞がある。
ロマンチシズムの追求はよいのだけれど、まれに意味の取りづらい歌がある。たとえば次の1首。
ひとり来る冬海青き鎌倉に似合うといわれしサングラスして
これは、次のように分けられるのだろう。
ひとり来る 冬海青き鎌倉に 似合うといわれしサングラスして
語順を変えて、わかりやすい歌にならないか。
以下に気に入りの5首を引く。
ポリポリと星かむごとく餌を食む夜更けて犬も淋しくあらむ
解き放つ帯はのたうつごとくにてしがらみ一つ畳に長し
胸ぬちを何のときめき携帯の電話がふいに帯に微動す
薄暗き唐津の壷の紅をエーゲの海の朝焼けに見し
緑濃き野点に朱き毛氈のいつしか眩しき華甲も過ぎぬ
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