古井由吉「木犀の日」
講談社文芸文庫、2009年9刷。
かつて楽天のポイントがまとまって付与された時、哲学書(文庫本)とともに、買った彼の小説の1冊と記憶している。
この1冊のテーマは、「現代の狂気」と言うべきか。
最初の「先導獣の話」は、大都市の出勤ラッシュが整然としている異常さを描く。
「夜はいま」では、精神病院に入院している男性が、主人公である。発症の因は語られなく、院内での様子が描かれる。主人公は退院するのだが、末尾ではまた入院中である。
「秋の日」では、結婚6年めで30歳近い男性が、別の女性に養われる(ほとんど外出もせず)ようになり、20年を経る。その女性の死によって、主人公は社会復帰を果たす。
第64回芥川賞を受けた「杳子」が、神経症気味の女子大生との出会いを描いた小説だった。古井由吉の文学のテーマに、「現代の狂気」があるのだろう。
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