岡井隆「宮殿」
「岡井隆全歌集」第Ⅲ巻より、5番め、最後の歌集「宮殿」を読みおえる。
2006年、思潮社・刊。2重箱、月報、資料集成Ⅱあり。
原著は、1991年、沖積舎・刊。
第Ⅲ巻月報に載る、荻原裕幸・石井辰彦を含む鼎談で、荻原裕幸が「珍しく歌壇の反応が少なかった歌集ですよね」と発言し、岡井隆自身も「『宮殿』は、普及したけれども評判が悪い」と発言している。
編集者が、春夏秋冬の4部に編集し直した歌集である事が、従来の歌壇のやり方に反しているため、と捉えるようだ。
以下に8首を引く。
誰も居ぬ闇にむかひてうなづいて大川端へ消ゆる関取り
財に向き動くこころはいひわけのあまたを持ちてさあれさすらふ
才能を蕩尽したる彼(かれ)といへ浪費に耐ふる才華すがしく
聴衆にいびきかく人ひとり居て上田三四二論ずつたずた
片腕のしびれてさむる昼熟睡(うまい)あはれレッスン?情死のための
固きパン朝々に割(さ)きいつしかに慣るるがごとしあはき旅愁の
昨日見て今日うたがふを係恋の常とわらひて手帳閉ぢたり
たましひの闇市へ行く思ひかな二百人ほど待つとし聞けば
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