有馬敲「迷路から」
今年11月30日の記事で紹介した、有馬敲さんに頂いた3部作詩集「転生記(てんしょうき、1993年・刊)より、第2部「迷路から」を読みおえる。
11月30日の記事で、「ほとんどがソネット形式の詩である」と書いたが、ここまで読んで、459編すべてがソネット詩であることがわかった。
第1部「終りのはじまり」117編の読了を報告したのは、今年12月7日の記事である。第3部「白い闇」は、単行本詩集で読みおえているので、省略したい。
第2部「迷路から」は、213編のソネットより成り、心の苦しむ仕事、体調の不良、宿酔、帰郷、地方への旅(詩の朗読会を含むようだ)などを描きながら、カタルシスを得られず、まさに「迷路」をさまよう姿である。
はじめの方の「3」を引く。
迷路から 3
有馬敲
ステンレスの机 椅子見えない鎖につながれて
くりかえしの手仕事を
いつまでも課せられている
のどが渇くいやす水をもとめて
手洗いへ席を立ってゆくと
(おお わずかばかりの自由)
廊下の空気はここちよくあかあかと蛍光灯がともり
軽い音楽まで流されている
祝福せよ 徒刑囚を前かがみに白い便器をまたぎ
全身から水分を絞り出す
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