中島斌雄「樹氷群」
角川書店「増補 現代俳句大系」第4巻(昭和56年・刊)より、5番めの句集、中島斌雄(なかじま・たけお)「樹氷群」を読みおえる。
原著は、昭和16年、甲鳥書林・刊。
自序、昭和6年より昭和15年に至る388句、長い長い自跋(句歴、俳論を含む)を収める。
彼の句には反戦、とまで言えなくても、厭戦的傾向がある。
それは東大大学院を修了し教諭・教授を務めた知性か、旅行(登山、スキーを含む)を楽しめる家庭的余裕からか。
以下に6句を引く。
しんしんと霜おく気配筆を擱く
妻はたゞ栗拾ふことひたすらに
妻の手の冷たしバスは山に入る
英霊還る川涸れ鴉あまたあさる
歓送の渦の外(と)寒く老婆負はれ
林檎樹下妻よリユックの麵麭食まう
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