岡井隆「ウランと白鳥」
思潮社「岡井隆全歌集」第Ⅳ巻(2006年・刊)より、第17歌集(月報の大辻隆弘・編「岡井隆全歌集解題」に拠る)「ウランと白鳥」を読みおえる。
原著は、1998年、短歌研究社・刊。
1996年秋、彼が青森県六ヶ所村の原子燃料サイクル施設の視察に参加した際の連作が、冒頭にある。
以下に6首を引く。
にこやかに核(ニュークリアス)の神官の予防着厚くわれをいざなふ
はるかなる原子炉の火をしたひつつ日にけに甘く熟れゆくウラン
朝粥の滅法辛くうつくしい口調で悲しいことを言ひ出づ
雪になるかも知れないと言ひ合ひて雪になりたるのちの入浴
もう遅いかも知れないがともかくも着手が大事、(さうかさうかな)
くらがりに置き捨てありし書物(ほん)の芽が月光のなかけぶらひわたる
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