永井陽子「ふしぎな楽器」
青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、4冊めの「ふしぎな楽器」を読みおえる。
原著は、1986年、沖積舎・刊。
138首とエッセイ5編を収録。粟津則雄・解説。
名古屋、京都でのシンポジウムに参加するなど、歌壇的には行動した時期だが、個人的には孤独な作歌生活だったろうと思われる。
エッセイ「魔笛」で全身が音楽となった体験を、「あとがき」で「うたはふしぎな楽器であると、…」と述べて、音楽との親密性を語っている。
以下に6首を引く。
今宵ぎちぎち星が燃えはて落ちぬかと大熊星座たしかめに出づ
高麗人は装ひをとき韻を解きほのかにひとをおもひそめにき
くわつと照る陽をまたくわつと押し戻し都会は熱き方形のつらなり
秋天の藍のましたに円座成し縄文人ももの食ふころぞ
ただ一挺の天与の楽器短歌といふ人体に似てやはらかな楽器
振りむけば官位のことを気に病める定家もゐたり秋の陽のなか
ダウンロード・フォト集より。
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