初井しづ枝「夏木立」
結社誌「コスモス」の、先達歌人の歌集を何冊か持っているので、おいおい、拙いながら紹介してゆきたい。
まず初井しづ枝氏の、最終となった第5歌集「夏木立」である。
昭和50年、白玉書房・刊。704首。
写真は、箱の表である。当時の歌集は、箱、題簽、口絵等、豪華である。
初井しづ枝氏(1900~1976)は、「日光」→「短歌民族」「香蘭」→「多磨」を経て、1953年の「コスモス」創刊に参加。
生涯の5歌集の外、「初井しづ枝全歌集」(1976、立風書房・刊)外がある。
評価が高く、「第22回読売文学賞」を受賞した第4歌集「冬至梅」を、僕は読んでいなくて残念である。
「夏木立」より、6首を引く。
裏山の清水落ちきて門川に水車のめぐる冬の音あり
沙羅の木の幹のおもてに紅淡く紫淡くさしまじるかな
冬池の濁りのなかにゐる鯉の鱗の金の淡きしづまり
病棟の涼しき露地にたち出でて心素直に洗ひ髪乾す
ゆらゆらと翳の如くに舞ひ入りし揚羽が羽ぶり強く出でゆく
はなやぎしけふの茜も消えゆくか一つ冬雲燃え残しつつ
一部、正字を略字に変えて、書いてある。
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