東谷節子「明日の神話」
東谷節子(ひがしたに・せつこ)さんの第1歌集、「明日の神話」を読みおえる。
2006年、短歌研究社・刊。青井史・帯文。
彼女は、1938年・生れ、1990年「雁来紅(かまつか)短歌会」参加、1995年「かりうど」(青井史・創刊)の創刊に参加、現在に至る。
夫の両親の老齢等により、西宮市で同居。娘の結婚、出産があり、舅の逝去、阪神大震災にも遭った。
それらを経るには、短歌の力も大きかっただろう。
イタリア・フランス・旧東独を訪う旅、風の盆への旅、9・11、イラク戦反戦運動なども、詠われている。
古典文法、新かな遣いを用いる。
以下に8首を引く。
嫁ぐ日の迫りて寡黙になりし娘は微笑むこと多し吾に対いて
「嫁からの義理チョコですが」と差出せば舅ははつかに笑み給うなり
父母と共に老いゆく明け暮れの夫の寡黙は病にも似る
面伏せて胎児を庇う娘には母なる仕草のすでに身につく
ローソクの芯の如くに病み細り舅は風熱き七月に果つ
舅という支柱失くせし姑の蔓宙に揺れいる如き危うさ
「しんどい」と言いつつ夫は足軽く二度目の勤めの朝を出でゆく
全身の骨の疼きに喘ぎつつ「もう死なして」と姉は言いにき(急性白血病)
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