笠井朱実「草色気流」
笠井朱実さん(「音短歌会」所属)の第1歌集、「草色気流」を読みおえる。
2010年、砂子屋書房・刊。
337首。栞付き。
米川千嘉子、黒瀬珂瀾、玉井清弘、3氏の栞文を得て、幸福な出発であっただろう。
「あとがき」で彼女は、「言葉は楽しい。言葉のつくる、生み出す世界が、わたしにとってほんとうよりもずっと親しく思えるほどに。」と述べる。
ただし僕は、詩としてレトリックのトップのきらめく作品より、少しだけトーンダウンした作品を好んだ。
以下に7首を引く。
中也の帽子まぶかにかむり青年はひどくおほきな歩幅に降りる
うすあをき瞳に見ゆるニッポンはゆふぐれですか異国の人よ
ふつくらと胸ふくらませ青き鳥いくつ眠れるりんだうの花
めそめそと泣く母われのそばに来て薄荷(はつか)飴玉食べてをり子は
根来塗お弁当箱たいせつの言葉のやうに少女はつつむ
イギリスのちひさな町に朝なさなしましま靴下干す姪がゐる
強がりの十八歳のうつむけば樹液のやうに涙ふくらむ
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