鈴江幸太郎「雪後集」「『雪後集』以後」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、15番めの「雪後集」と、それより亡くなるまでの作品を全歌集に載せた、「『雪後集」』以後」を読みおえる。
先の9月11日の記事(←リンクしてある)にアップした、「石蓴集」に続く、最後の作品群である。
「雪後集」の原著は、1981年、初音書房・刊。328首。
年譜の1980年5月、6月の項に、喉頭・声帯障害のためコバルト照射を受く、とあって癌だったようだ。
1981年7月、「雪後集」」刊行。11月4日、逝去。12月30日、15歌集に「『雪後集」』以後」35首を加え、解説、年譜、後記を付して、全歌集・刊行。
「雪後集」より6首、「『雪後集」』以後」より1首を引く。
暖かきみ冬の園をよろこびてまづ池の上の白梅(しらうめ)の花
五十年前のある夜の櫻ばな君も夫人も世盛りにして
夏ごとのかかる集ひも幾十年嗄れたる聲もすでに嘆かず
相鬪ひ若く死にしをあはれみて巌流島の名をとどめたり
老次(おいなみ)の我は登らず草靡け嶺を極むる友ら見てゐる
コバルトに日々に喉(のみど)を灼きて臥す今更にして命惜しめば
聲戚(しじ)む老といへども新妻のわが孫の聲にしばし救はる
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