歌文集「やまぐに」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年5刷)より、歌文集「やまぐに」を読みおえる。
先月9月12日の記事(←リンクしてある)、未刊歌集「杳かなる湖」に継ぐ。
原著は、1947年、臼井書房・刊。
18章150首(のちに145首)の短歌に、12編の随筆を挿んでいる。1946年の作品である。
1945年に長野県に疎開し、終生住むこととなった地での、戦後出発の短歌を読める。
酷寒の物資乏しい地での厳しい生活と、鍋・釜が買え塩の配給が貰える、復活の希望が、詠まれたと僕は考える。
以下に6首を引く。
白梅のことしも咲くと目にとめて言ひつくしがたき思ひもあるを
伏せ馴れしまぶたを上げてみづみづし春至り来る山河を見む
失(う)せはてし想ひをたどるりんご樹の花あかり道すでに昏(くら)みぬ
土よごれ染みたる顔をいら立てて野良の女になりきれず我は
若き等の踊りのむれにまぎれ入り手打ちはやせばたのしきに似る
あくせくとわれの日毎の手仕事よ冬すでに近む雑草の色
(注:旧漢字を新漢字に替えた所があります)。
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