近藤芳美「早春歌」
2012年4月10日の記事(←リンクしてある)で購入を報せた「近藤芳美集」を、3年近く経てから、ようやく読み始める。
近藤芳美(1913年~2006年)は、1932年に「アララギ」入会、1951年に「未来」創刊・主宰した。
作歌・評論と共に、数紙の新聞歌壇選者を長く続けて、その事も高く評価されている。
今回紹介するのは、第1歌集「早春歌」。
1948年、四季書房・刊。
建築設計系の学生として心揺れる日々、朝鮮半島での勤め、年子夫人との恋愛・結婚、従軍、負傷・肺結核による除隊、敗戦までを詠った。
彼が偉大な歌人だったから、生き残り活躍したのではない。
生き残った戦中派だから、励み行動して、偉大な歌人になったのだ。
以下に6首を引く。
兵となり満州に行きたしと言ふ友よかつてマルクスを説きあかざりき
寄り行きて人夫を詰る吾の声ひとりごと言ふ如き吾が声
たちまちに君の姿を霧とざし或る楽章をわれは思ひき
青写真日に白じらと曝(さ)れ行けば一人の如き吾の思ひか
近々とまなこ閉ぢ居し汝の顔何の光に明るかりしか
胸にうづめて嗚咽して居し吾が妻の明るき顔をしばしして上ぐ
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