若山牧水「みなかみ」
Kindle本「若山牧水大全」より、第6歌集「みなかみ」を、タブレットで読みおえる。
今月3日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「死か芸術か」に継ぐ。
原著は、1913年(大正2年)、籾山書店・刊。506首。
牧水は父親重体の報を得て帰郷し、やがて父が亡くなる。1家でただ独りの男子の牧水に、1家の生活がかかるが牧水に方策はなく、苦悶懊悩の中に成された作品である。
作品は、破調というより乱調の歌がほとんどで、定型の歌を見つけるのが難しいくらいである。その定型の歌より、以下に6首を引く。
草山に膝をいだきつまんまろに真赤き秋の夕日をぞ見る
父よなど坐るとすればうとうとと薄きねむりに耽りたまふぞ
おお、夜の瀬の鳴ることよおもひでのはたととだえてさびしき耳に
やうやくに馬の跫音のきこえきぬ悲しき夜も明けむとすらし
斯くばかり明るき光さす窓になにとて悔をのみ思ふらむ
酒の後、指にあぶらの出でてきぬ、こよひひとしほ匂へ朱欒よ
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