大江健三郎「美しいアナベル・リイ」
変わらずに本を読む事は好きだけれども、最近は根気がなくなって、詩歌句集でも、分けてここで紹介する場合もある。
それでも文庫本棚より、カバーの左端が日焼けした、大江健三郎「美しいアナベル・リイ」(新潮文庫、2010年・刊)を読んでみた。文章は意外と読みやすかった。
内容は、ロリータ傾向には興味が持てなかった。クライストの小説(?)「ミヒャエル・コールハウスの運命」を翻案して映画化するプロジェクトがあり、「私」が脚本を担当したが、挫折した。
30年後、そのプロデューサーと女優(共に国際的に活躍した)が、再挑戦として、明治維新前後の2つの一揆を、四国の「私」の郷里で舞台化する。
ここで、6月12日の記事、季刊「ココア共和国」vol.19で、僕が秋亜綺羅さんのエッセイを有意義だ、と書いた事に結びつく。「津波ごっこをして笑える日」で「そろそろ、震災にカーテンコールをさせなければならない、と思うのです」と述べている。
2つの一揆は、60年安保と68年頃の学生運動ではないか。それら2つを演劇化する事で、半世紀経た怨念を、昇華しようとするのではないか。小説は、ほぼ舞台裏ばかりだが、筋書と予行も1部、描かれている。
大江健三郎は小説で、三島由紀夫事件や、オウム真理教事件を、翻案して描いて来たと、僕は思ってもいる。
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