竹山広「残響」
ながらみ書房「定本 竹山広全歌集」(2014年・刊)より、第3歌集「残響」を読みおえる。
第2歌集「葉桜の丘」は、先の6月1日付けの記事(←リンクしてある)で紹介した。
「残響」は、1990年、雁書館・刊。467首。
この間、生業の印刷所を閉めて(66歳)いる。地域の歌人と交わり、核実験反対の座り込みに参加。
また結社「心の花」や総合歌誌で注目され始める。
悲惨な経験を経て、乏しさ(貧しくはない)と反骨精神は、時にユーモアのある作品を生んだ。
以下に7首を引く。
椅子ふかくかなしみをれば二度三度きし鵯のおちつかず去る
活字一式地金に売りて労働のあとかたもなき空間さむし
髪触るるまで子の墓にうなかぶす妻のうしろに寄りゆきがたし
たたみ十枚干して困憊せるわれに被爆時刻のサイレンひびく
座込みで何が得られると自問して賢くなりし人は去りゆく
灯を消しし窓にをりをりきて触る昭和終焉のこの雨の音
天の橋立股よりのぞき見る妻よ眩暈(めまひ)をおそれわれはせなくに
コメント