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2009年1月 1日 (木)

松田幸「春雷」

003  東京都に在住の歌人、松田幸(まつだ さち)さんの第2歌集、「春雷」を読みおえる。

 2003年、丸善出版サービスセンター・刊、非売品。

 1ページ2首、214ページ、総389首。

 この歌集には、彼女の経歴、所属歌誌などは、記されていない。

 夫を亡くして年経た彼女は、海外旅行、音楽会、美術館めぐりなど、楽しみながらも、心に不安があるようだ。

 この歌集の作品の特色は、目の前にないものと現実を絡めて、心情を表現している所にあるだろう。小島ゆかりさんの短歌にあるような、シュールなところはない。

 読み進めながら付箋を貼った作品より、5首を以下に引く。

ひもすがら観念の野をかけめぐり母の呼ぶ声未だ聞こえず

過去なべて君にまみえむ序奏とぞ夢で告げしが誰とも知れず

襤褸もてレンズを磨くスピノザをぼろ市に見きと人に語るな

古径描く画面ゆきかふ勁き線わが生き様にこの一線が欲し

手を振りて去りゆく君の幻よこの世の辻にかなかなの啼く

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