新免君子「冬のダリア」
短歌新聞社、平成15年・刊。
著者は、1926年生、島根県・在住、「湖笛」「未来」会員。
この本は、彼女の「風庭」「飛花」に続く、第3歌集である。
題材は旧・満州より引揚げの惨、子のない夫婦の穏やかな生、亡き父、母の看取り、などである。
既成の言い回しが目につくが、人生の重みを伝えて、貴重な歌集である。
以下に、読みながら付箋を貼った、6首を引く。
飼い犬の死にて嘆くに嵩山はそうかそうかとただ冬の山
一人子を他界へやりしおとうとの去年の冬よりもの言いの鋭し
どっと動くわけのわからぬ感情も山ふかければその儘にして
戦車と戦火なだるる地平を逃れゆき夏の落日あかあかと見し
年月をつねに家族は二人のみ桜の花の咲きても二人
雪おこすいかずちならむ親しけれとどろと鳴りてこの年も冬
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