田久保英夫「海図」
講談社文芸文庫、昭和63年・刊、帯。
読売文学賞受賞。
おもな登場人物は、主人公(40歳代の男性)と、別居中の妻子(子2人、筋の途中で離婚)と、同棲中の宗子、その父親の令吉、である。
令吉がヨットの帆の設計者という設定で、ヨットの走行や操作の場面がしばしば現れて美しい。
作者が、学生時代にディンギーという小さなヨットに乗っていたこと、執筆の10年くらいまえからクルーザーに乗る機会を持ったことなどが、美しい描写に反映しているのだろう。
カバー裏面の解説などにある、「宗子の父親からの精神的独立」というテーマに、僕はあまり関心がない。
僕は田久保英夫の小説が好きで、3、4冊を読んでいるだろう。
主人公の男性が、女性に対して酷薄なところがあるように読めて、心に引っかかる。
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