田宮朋子「雪月の家」
新潟県に在住の歌人、田宮朋子さん(「コスモス」選者、「桟橋」同人)が、第3歌集「雪月(ゆきづき)の家」を送ってくださった。
角川書店、平成22年3月・刊。
「21世紀歌人シリーズ」中の1冊。
「雪月」は旧暦12月の異称であり、家で過ごす時間が長いことから、歌集題にしたと、「あとがき」にある。
作品は、純粋にして篤実な性格を思わせる、佳品ばかりである。
比喩の歌も多いが、穏やかな、無理のないものである。
以下に6首を引いてみる。
うたたねの猫が枕にしてゐるはわが読みさしの『この世この生』
キッチンがグラグラ揺れて揺れ続けズシンドシンと大地震くる
水面に舌先ちらと触れてのち猫はひたひた水飲みはじむ
とつぜんに窓をべきばき震はせてすがたなき自衛隊機すぎたり
谷あひの旧道たれもゐなければエンジン切りて山の音聴く
蓮の糸ならぬ言葉をあやつりてちやうちやうはたりと紡ぐ曼荼羅
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