田江岑子「水のノート」
2005年、美研インターナショナル・刊。
いわゆるビジュアル歌集である。本文の地は、ピントの大きく外れた自然写真のようなものに、木の葉や蝶や鳥のイラストをあしらってある。
1首2行書き、多くは1ページ2首である。
帯とそのキャッチコピーはあるけれども、跋文も後書きもない。サンマリノ共和国初代特命全権大使、マンリオ・カデロ氏の短い言葉があるのみである。
以下に5首を引く。
水流る砕けさばしる落下する青葉隠れに母は見ていむ
木漏れ日のゆれる泉を掬いのむここよりけもの道あゆむべし
鮎一尾描かれてある飾り皿水に沈めて故郷をよびぬ
人間と鬼との間(あわい)川ながれどこで散りしか紅葉ながれ来
一頭の馬おのずから群れと化し地吹雪となり曠野を走る
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