森川暁水「黴」
角川書店「増補 現代俳句大系」第2巻(昭和56年・刊)より、11番めの句集、森川暁水(もりかわ・ぎょうすい)の「黴」を読みおえる。
原著は昭和12年、同刊行会・刊。
高浜虚子はその序文で、一茶との類似を挙げるけれど、貧しく家庭的に恵まれなかった所が、そうだろうか。
一茶は俳句の宗匠として通したが、暁水は表具師として勤め、のちに古書籍商を経た。彼は妻帯したが、妻は病みがちで、子供は生れなかった。
この巻の末尾にも、俳句、一般文学、社会、の3段の年表が付されるが、昭和12年には、いわゆる日華事変が起こり、「日独伊防共協定」が結ばれ、日本は戦争へ入って行く。
「黴」のような、貧家庭を描いた句集は、後世に生き残った。
以下に5句を引く。
煮凝や親の代よりふしあはせ
うはごとをいうて泣きをり風邪の妻
貧乏の壁に枕や水中り
帯かへて門辺の妻や花火の夜
蚊がかほにあたる家路を疲れつつ
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