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2011年6月 1日 (水)

歌集「慈しむ」

Cimg5062  城谷榮子さんの第1歌集、「慈しむ」を読みおえる。

 2002年、短歌研究社・刊。

 パラフィン紙カバー、370余首・自選。

 城谷榮子(じょうや・えいこ)さんは、広島県・在住、「未来」所属。

 戦中、戦後、平成の世を生き抜いて、孫を抱く身になるまでの哀楽を描いて、沁みる作品群である。

 夫、姑は被爆してをり、夫婦ともに癌の手術など苦しみもあり、子供たちが就職し巣立つなどの喜びも描いて、記録だけではなく文学作品として遺るのは、尊いことだ。

 以下に7首を引く。

この静寂幸せと言わん就職の叶いし子らは任地に発ちぬ

吹く風にゆだね散りゆく白萩の優しさの欲し手に受けてみぬ

日本の桜に逢えしか波のごと海に戻りゆく航海士の子

朝なあさなどなたですかと聞く姑に今日もさわやかに答えいる嫁

癌などに負けじと夫と立つ丘に芽吹き間近き木々のかがやき

姑は語り給いき被爆後の舅を戸板に載せて焼きしを

死の出撃待ちつつ浜に眺めしか黒髪島に寄する白波

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