古井由吉(ふるい・よしきち)の短編小説集「夜明けの家」を読みおえる。
講談社文芸文庫、2008年・刊、帯。
12編のうち、最も惹かれたのは、「島の日」という短めの作品である。
北方の外国の島を訪れたという設定で、作者本人の他、人物がほとんど現れない。海洋などの自然と、鳥などの生物の描写ばかりだ。
僕が昔、自然描写だけの小説を書きたい、と思った時期があったと思い出した。
僕が今、取り組んでいる短歌には、自然詠、叙景歌、というジャンルがある。もっとも僕は、人間関係を詠むことが多いけれども。
初老の鬱や、矛盾するようだが、欲の落ちていく様が、粘っこい心理描写で作品化されているようだ。
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