藤井光子「花時計」
2003年、砂子屋書房・刊。
彼女は、愛知県・在住、「未来」所属。
257首を収める。岡井隆の跋文、「『花時計』の作者に」を付す。
歌舞伎、能を観劇する教養をもち、国内、外国を旅行しての作品も多い。
僕の及びもつかない境涯である。(僕は僕なりに詠むしかないだろう)。
彼女は、心を鎧う場合があるというか、見得をきったような作品が散見されて、気になる。
以下に7首を引く。
三月は幹の瘤さへつやめくをとりのこされてゐる昼の月
さみだれや春琴ごつこなししとふ潤一郎とその妻松子
山いくつゑぐり採りしかここかしこ巨き窪あり瀬戸珪砂鉱
偏愛に似たれば重くなつかしき聖護院大根抱へて帰る
水面打つ櫂ひそやかにゴンドラは狭き運河の橋くぐりゆく
逃亡はもはやかなはぬ外壁を亜麻色に塗りやさしく棲まむ
PK戦まで追ひつめずひたすらに黒豆を煮む来世紀まで
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