岡井隆「親和力」
思潮社「岡井隆全歌集」第3巻(2006年・刊)より、4番めの「親和力」を読みおえる。
原著は、1989年、砂子屋書房・刊。
あとがきに「一体、歌集の作者って誰だろう」「なぜ『歌集』なのだろう」とある。
彼の詠作があちこち曲がっている印象だが、作者の迷いか、試行錯誤か、僕にはよくわからない。
以下に8首を引く。
今か沈む今か水漬(づ)くと怖れつつ煮えたぎるやうなにくしみは来(こ)ず
十あまり八年は過ぎどちらから声かけたやらそれさへおぼろ
伝票のながながしきを折りながらまだすこしあるだらう時間は
酒が来て肴が来(こ)ぬ間(ま)言ふべきか迷ひたれども一語言はずき
ワン・パタといふ短縮語またしても資本は遊ぶ海彼岸(かいひがん)まで
わづかづつ黄色になりて行く紙のいかなる歌に逢はば燃え立つ
学生のころ読みさしし小説を歳月をへて読みつぎて行く
暁闇が曙光へうごく浄き刻(とき)きみ亡(な)きのちもしぶとく生きむ
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